Last Updated on 2025年12月28日 by 監修者:司法書士 藤田太
任意整理を考えたとき、「借金を減らしたいのに、弁護士や司法書士の費用が払えない…」と悩み、不安になる方は少なくありません。任意整理の費用の支払いが難しくなったとき、大切なのは「すぐに動くこと」です。放置すると、依頼していた手続きが中断され、債権者との和解が白紙に戻ってしまう可能性があります。そうなれば、再び取り立てが再開されるだけでなく、遅延損害金も積み重なることになりかねません。「もう少し様子を見よう」と先延ばしにしてしまうと、選択肢がどんどん狭まってしまうため、注意が必要です。
この記事では、任意整理の手続きで費用が払えない時の対処法について解説します。ぜひ参考にしてください。
任意整理の費用が払えない!今すぐやるべきこととは?
任意整理の費用支払いが難しくなったとき、まず最初にやるべきことは、依頼している弁護士や司法書士に正直に状況を伝えることです。これは決して恥ずかしいことでも、迷惑をかけることでもありません。「言い出しづらい」と感じるかもしれませんが、早めに相談することで、分割回数の見直し・支払い猶予・別の手続きへの切り替え等、複数の選択肢を提示してもらえる可能性があります。
まず最初にやるべきこと(現状把握・緊急度判定)
任意整理の費用が払えないと気づいたとき、最初にやるべきことは、今の状況を正確に把握することです。 具体的には、以下の3つの点を確認してください。
1.残りの支払額と支払期限を確認する
依頼時に受け取った契約書や、事務所から届いている請求書を見て、「あといくら残っているのか」「いつまでに支払う必要があるのか」を正確に把握します。たとえば、「残り3回分で合計12万円、次回支払いは来月15日」といったように、具体的な数字を書き出してみると、状況が整理しやすくなります。
2.今月・来月の収支を洗い出す
次に、今の収入と支出のバランスを冷静に見つめ直してみましょう。給料日はいつで、いくら手元に残るのか。家賃・光熱費・食費などの固定費を差し引いた後、弁護士費用に回せる金額はどれくらいあるのか。紙に書き出すだけでも、「どこまでなら支払えるのか」「どこから無理なのか」が見えてきます。
3.緊急度を判断する
次回の支払期日まで、あとどれくらい猶予がありますか?「すでに滞納している」「支払期限まで残り1週間」といった場合は緊急度が高く、今すぐ行動する必要があります。一方、「来月の支払いが厳しくなりそう」という段階であれば、まだ対応の選択肢は多く残されています。
緊急度を判断する目安として、以下を参考にしてみてください。
・緊急度・高: すでに支払いを1回以上滞納している / 事務所から督促の連絡がきている
・緊急度・中: 次回支払期限まで2週間以内で、支払いが難しい見込み
・緊急度・低: 来月以降の支払いに不安があるが、今月分はまだ支払える
緊急度が高い場合は、「相談時に必要な情報」を揃えたうえで、今日中にでも依頼している専門家に連絡を入れることをおすすめします。緊急度が中程度であれば、数日以内に連絡をとりましょう。緊急度が低い場合でも、早めに相談しておくことで、より多くの選択肢を残すことができます。
「費用が払えないことを伝えたら怒られるのでは」「辞任されてしまうのでは」と心配になるかもしれませんが、多くの専門家は、相談者が困っている状況を理解しています。むしろ、連絡をせずに放置してしまうことの方が、関係悪化や辞任につながるリスクが高くなるものです。そのため、まずは「現状を把握し、早めに相談する」ことが、何よりも大切なのです。
相談時に必要な情報・書類一覧
相談をスムーズに進め、実情に合った対応を提案してもらうためには、事前に必要な情報や書類を揃えておくことが重要です。ここでは、相談時に手元に用意しておくべき情報と書類を、優先度の高い順にご紹介します。
優先度★★★(必ず用意すべきもの)
1.契約書・委任契約書(任意整理の依頼時に受け取った書類)
依頼時に取り交わした契約書には、費用の総額・分割回数・支払期日などが記載されています。これがあれば、「あといくら残っているか」「いつまでに支払う必要があるか」を正確に確認できます。
2.これまでの支払い履歴がわかるもの(振込明細・領収書など)
すでに何回支払ったのか、いくら支払ったのかを示す書類です。事務所側も記録を持っていますが、あなた自身が把握しておくことで、話がスムーズに進みます。
3.現在の収入がわかる書類(給与明細・源泉徴収票など)
直近1〜2か月分の給与明細があると、「今の収入がどれくらいで、支払いにどのくらい回せるか」を具体的に説明しやすくなります。
4.家計の収支メモ(手書きやスマートフォンのメモでも構いません)
家賃・光熱費・食費・携帯代など、毎月の固定費をざっくりでも書き出しておくと、「どこまでなら支払いに回せるか」を専門家と一緒に考えやすくなります。完璧な家計簿である必要はありません。
優先度★★(あると役立つもの)
5.支払いが難しくなった理由を説明できる資料(あれば)
たとえば、「急な医療費がかかった」「勤務先の給料が減った」「家族の介護が必要になった」など、支払いが困難になった背景がわかる資料があると、事務所側もより親身に対応してくれる可能性があります。診断書・給与明細の変動・領収書などがあれば、持参するとよいでしょう。
優先度★(念のため持っておくとよいもの)
6.預金通帳のコピーや残高メモ
「一時的に立て替えられる貯金があるか」「支払いの見通しはどうか」を判断する材料になります。見せたくない場合は無理に用意する必要はありませんが、正直に話した方が、より現実的な提案を受けられることもあります。
これらの情報が揃っていれば、専門家は「この人の状況なら、支払い猶予ができそうか」「分割回数を増やせば払えるか」「一時的にストップして、別の方法を考えるべきか」など、的確に判断ををすることができます。
もし、全部揃えるのが難しい場合は、少なくとも「契約書」「収入がわかるもの」「支払い履歴」の3つだけでも、まずは手元にあるものを持って、早めに相談してみることをおすすめします。
完璧に準備できなくても、「今わかる範囲で整理してみた」という姿勢が大切です。
任意整理の費用が支払えない背景には、どんな事情があるのか
任意整理を依頼する方の多くは、すでに生活が困窮しているケースがほとんどではないでしょうか。毎月の返済に追われていた状況がようやく止まり、ホッとしたのも束の間、今度は事務所への分割費用が家計を圧迫する、といったような、この流れは、実はとても自然なことです。
たとえば、複数の貸金業者から借入をしていた方が、月々の返済額を8万円から4万円に減額できたとしても、同時に弁護士・司法書士への費用として月3万円の分割払いが発生すれば、実質的な負担軽減はわずか1万円にすぎない、というケースも考えられます。収入が不安定だったり、突然の出費があったりすれば、すぐに支払いが滞ってしまう可能性も出てくるでしょう。
また、「任意整理をすれば全て解決する」という期待を持ちすぎていたことで、支払い能力を過信してしまうケースも散見されます。手続き開始時には「頑張れば払える」と思っていた金額が、数か月経ってみると現実的ではなかったという事例も珍しくありません。これは決してあなただけの問題ではなく、制度設計や事前説明の不足が背景にある構造的な問題とも言えます。
さらに、任意整理の費用が払えない背景には、依頼時の収支見通しの甘さだけでなく、依頼後の生活環境の変化も深く関わっています。急な失業や病気、家族の介護が必要になったなど、予期せぬ出来事が重なることで、当初の支払い計画が一気に崩れてしまうことも少なくありません。こうした事情は誰にでも起こりうるものであり、計画通りにいかないことも考えられるため、すぐに対応することが重要です。
費用を払えなくなったとき、専門家はどう対応するのか
では、もし費用の支払いが難しくなった場合、依頼している事務所はどのように対応するのでしょうか。ここには大きく分けて「辞任」と「対応継続」の二つの選択肢があります。
まず、最も避けたいのが「辞任」というケースです。これは、弁護士や司法書士が、債務者であるあなたの代理人を降りるという意味を持ちます。辞任されると、債権者への交渉がストップし、場合によっては再び取り立てが始まる可能性も考えられます。ただし、こうした辞任は突然行われるわけではなく、通常は事前に何度か支払いの催促や相談の機会が設けられます。それでも支払いの見込みが立たない、あるいは連絡が取れない状態が続く場合に、やむを得ず辞任という選択がなされるという流れです。
多くの事務所は「支払いが遅れているから即辞任」という対応は取りません。依頼者の状況を丁寧にヒアリングし、支払い計画の見直しや分割回数の延長、一時的な支払い猶予といった柔軟な対応を提案してくれることが一般的です。たとえば、月々3万円を2万円に減額したり、ボーナス払いを組み込んだりするなど、生活の実態に即した再調整が可能な場合もあります。
また、事務所によっては「法テラスへの切り替え」や「他の債務整理手続きへの変更」といった代替案を提示してくれることもあります。任意整理の費用を払い続けることが現実的でない場合、自己破産や個人再生など、他の手続きに移行する方が結果的に負担が少なく、早期に生活再建できる可能性もあるためです。
ただし、専門家が柔軟な対応をしてくれるかどうかは、あなたがどれだけ誠実に状況を伝え、相談の姿勢を見せるかにかかっています。連絡を無視したり、嘘の理由を伝えたりすると、信頼関係が崩れ、結果として辞任に至るなどトラブルにつながるリスクが高くなります。正直に、そして早めに相談することが、最も重要なポイントと言えます。
任意整理の費用が払えない!今すぐできる対処法5選
分割払いや後払い、法テラスの利用など、知識があるかどうかで選択肢は大きく変わるものです。ここでは、費用が払えない状況でも今すぐ取れる対処法について、具体的に5つ解説します。
1.法テラス利用時の条件と手続きの流れ
「任意整理をしたいけれど、弁護士費用を払う余裕がない」
そんなときに検討したいのが、法テラス(日本司法支援センター)の立替制度です。
法テラスは、経済的に余裕のない方でも法的支援を受けられるよう、国が設立した公的機関です。一定の条件を満たせば、任意整理にかかる弁護士・司法書士費用を一時的に立て替えてもらい、後から分割で返済することができます。
■ 利用できる主な条件(目安)
法テラスの利用には、以下のような資力要件があります。
・世帯の手取り収入が基準額以下であること
・現金・預貯金などの保有資産が基準額を超えていないこと
具体的な金額は世帯構成・居住地域・年度によって異なりますが、
たとえば単身世帯の場合、
・手取り月収:おおむね18万円前後以下
・保有資産:おおむね180万円以下
が一つの目安とされています。
配偶者や子どもがいる世帯では、この基準は引き上げられます。
※あくまで「目安」であり、最終的な判断は個別審査となります。
■ 手続きの流れ
法テラスを利用する場合の一般的な流れは、次のとおりです。
1.法テラスの窓口や電話で「民事法律扶助」の申込み
2.収入・資産を証明する書類を提出し、審査を受ける
(給与明細、源泉徴収票、通帳のコピーなど)
3.審査に通れば、法テラスが専門家費用を立て替え
4.任意整理の手続き開始
5.和解成立後、法テラスへ分割返済(原則月5,000円〜1万円程度)
返済額は収入状況に応じて調整されるため、無理のない範囲で続けやすいのが特徴です。
また、生活保護を受給している場合など、特に困窮している状況では、返済の猶予や免除が認められるケースもあります。
■ 利用時の注意点
法テラスにはメリットだけでなく、注意点もあります。
・原則として、法テラスと契約している弁護士・司法書士の中から依頼する
※ただし、法テラス登録の専門家であれば、指名できる場合もあります。
・審査に時間がかかることがある
→ 数週間かかるケースもあり、緊急性が高い場合には不向きなことも
・「無料」ではなく、あくまで立替制度
→ 任意整理後も、法テラスへの返済は続きます
それでも、初期費用をほとんど用意できない状況で専門家に依頼できる点は、大きな安心材料です。
「費用が理由で任意整理を諦めかけている」場合は、まず法テラスへの相談を検討してみましょう。
その他の無料相談・支援窓口
■ 自治体の無料法律相談
多くの市区町村では、定期的に無料の法律相談会を実施しています。
・弁護士による30分程度の相談
・費用は無料
・予約制が多い
今後の選択肢を整理する“最初の一歩”として活用しやすい窓口です。
■ 社会福祉協議会(社協)の生活福祉資金貸付制度
各自治体の社会福祉協議会では、低所得世帯などを対象に、
・緊急小口資金
・総合支援資金
といった無利子または低利の貸付制度を行っています。
「債務整理費用が一時的に足りない」「生活費が回らない」といった場合に、民間の借入よりも安全な選択肢となることがあります。
任意整理の費用が払えないからといって、すぐに諦める必要はありません。法テラスや公的支援を上手に使えば、費用の壁を越えて債務整理を進めることは十分可能です。
2.受任通知で取り立てが止まった分を弁護士費用に回す
任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、まず「受任通知」という書類が各債権者に送付されます。この受任通知が届くと、貸金業者からの督促や取り立てが法律上ストップします。これは貸金業法という法律で定められているルールで、違反すると業者側が罰則を受けることになるため、ほぼ確実に取り立ては止まることになります。
この「取り立てが止まる」という効果は、精神的な側面だけでなく、費用の支払いに困っている人にとって大きなメリットになります。その理由は、それまで毎月返済に充てていたお金が、一時的に手元に残るようになるからです。たとえば、毎月合計5万円を複数の業者に返済していた場合、受任通知が送られてから和解が成立するまでの数ヶ月間は、その5万円が浮くことになります。
この浮いたお金を、弁護士費用や司法書士費用の支払いに充てることができれば、費用負担の問題をかなり軽減できるといえます。ただし、ここで注意したいのは、「浮いたお金をすべて生活費に使ってしまわないこと」です。任意整理を成功させるためには、専門家への費用支払いを優先する必要があります。
もしすでに費用の支払いが滞っている場合は、担当の弁護士や司法書士に「受任通知後に浮いた返済分を費用に充てたい」と相談してみてください。状況を正直に伝えることで、支払いスケジュールの調整や、一時的な猶予をもらえる場合もあるはずです。
3.着手金無料や初回無料相談の事務所にすぐ連絡する
もし現在依頼している事務所の費用が払えず、どうしても継続が難しいと感じている場合は、「着手金無料」や「初回相談無料」の事務所に切り替えることも一つの選択肢です。着手金とは、任意整理の手続きを開始する際に最初に支払う費用のことで、一般的には1社あたり数万円かかることが多いです。この着手金が無料の事務所であれば、初期費用の負担をかなり減らすことができます。
また、「初回相談無料」の事務所であれば、まずは無料で自分の状況を相談し、具体的な費用の見積もりを出してもらうことができます。相談の段階でお金がかからないため、「今の事務所では費用が払えないけれど、別の事務所なら対応できるかもしれない」という可能性を探ることが可能です。
ただし、ここで一つ気をつけたいのは、「事務所を変えること自体にもリスクがある」という点です。すでに任意整理の手続きが進んでいる場合、途中で事務所を変更すると、それまでの交渉が白紙に戻ったり、新たに受任通知を送り直す必要が出てくることもあります。そうなると、債権者との信頼関係が損なわれたり、手続きが遅れる可能性も出てくるでしょう。
ですから、事務所を変えるかどうかは慎重に判断する必要があります。まずは今の事務所に「費用の支払いが厳しい」と正直に相談してみて、それでも解決策が見つからない場合に、他の事務所への切り替えを検討する、という順序が現実的です。無料相談を活用する際も、「今どの段階まで手続きが進んでいるのか」「事務所を変えた場合のデメリットはあるか」といった点をしっかり確認することが大切です。
4.分割払いや後払い対応の法律事務所を探す
任意整理の費用が一括で払えない場合、「分割払い」や「後払い」に対応している法律事務所を探すことも有効な対処法です。実は、債務整理を専門にしている事務所の多くは、依頼者の経済状況を理解しているため、柔軟な支払いプランを用意していることが多いものです。
たとえば、着手金や報酬金を6ヶ月から12ヶ月程度の分割払いにできる事務所や、任意整理が成立して和解が済んでから後払いで費用を支払える事務所もあります。後払いの場合、和解後に債権者への返済と並行して事務所への費用を支払う形になるため、手続き中の負担を大きく減らすことができます。
また、分割払いの場合でも、「毎月いくらなら無理なく払えるか」を事務所側と相談しながら決めることが重要です。たとえば月々1万円ずつの支払いであれば、生活費への影響を抑えながら、確実に費用を支払っていくことが可能となります。無理な支払い計画を立ててしまうと、結局また支払いが滞ってしまうので、現実的な金額で相談しましょう。
ただし、分割払いや後払いに対応している事務所でも、「どの時点から分割が始まるのか」「分割回数に上限はあるのか」「途中で支払いが遅れた場合どうなるのか」といった細かい条件は事務所ごとに異なります。契約前にこれらの点をしっかり確認し、書面でも条件を残してもらうことが安心につながります。
もし現在依頼している事務所が分割払いに対応していない場合は、「分割での支払いは可能でしょうか」と率直に相談してみることも大切です。状況によっては、柔軟に対応してくれることもあります。相談することで、意外な解決策が見つかることもあるので、まずは話してみることをおすすめします。
5.複数の事務所で費用見積もりを比較・交渉する
任意整理の費用は、実は事務所によってかなり幅があります。同じ「任意整理」という手続きでも、A事務所では1社あたり4万円、B事務所では2万円、といった違いが出ることも珍しくありません。そのため、もし現在の事務所の費用が高すぎて払えないと感じている場合は、他の事務所でも見積もりを取ってみることをおすすめします。
複数の事務所に相談して見積もりを比較することで、「もっと費用を抑えられる事務所があるかもしれない」という可能性を探ることができます。また、他の事務所の見積もりを持っていることで、現在の事務所に対して「他の事務所ではこのくらいの費用だったのですが、交渉の余地はありますか?」と相談する材料にもなるはずです。
ただし、ここで大切なのは「費用の安さだけで選ばない」ということです。任意整理は、ただ依頼すれば終わりというものではなく、債権者との交渉や書類のやり取り、今後の返済計画の立案など、専門家の対応力やサポート体制が結果を大きく左右します。費用が安くても、対応が遅かったり、交渉力が弱かったりすると、結果的に不利な条件で和解してしまうこともあります。
そのため、見積もりを比較する際には、「費用の内訳」「対応のスピード」「実績や口コミ」「相談のしやすさ」といった点も総合的に見て判断することが大切です。初回相談の際に、「費用が払えなくなった場合の対応」や「分割払いの条件」なども確認しておくと安心です。
また、もし今の事務所との関係がまだ良好であれば、費用の調整が可能かどうか、率直に相談してみるのも一つの方法です。場合によっては、費用の一部を減額してくれたり、支払いスケジュールを柔軟に調整してくれることもあるかもしれません。大切なのは、「費用が払えない」という状況を一人で抱え込まず、専門家にしっかり相談することです。
任意整理の費用相場と支払い方法を解説
せっかく借金問題を解決しようと第一歩を踏み出したのに、費用の支払いで行き詰まってしまうと、本末転倒な気持ちになってしまうものです。そのため、費用の仕組みを正しく理解し、自分に合った支払い方法を選び直すことで、実際に負担を軽減できる可能性もあります。
任意整理の費用相場と内訳
任意整理を弁護士や司法書士に依頼すると、主に「着手金」「報酬金(減額報酬・成功報酬)」「実費」の3つの種類の費用が発生します。依頼する前に、それぞれがどのような性質の費用なのか、どのタイミングで支払うのかを把握しておきましょう。後々の資金繰りにとって非常に大切です。
着手金は、専門家が正式に任意整理の業務を開始する際に発生する初期費用です。相場としては、債権者1社あたり2〜5万円程度が一般的です。ただし、事務所によっては着手金を無料にする代わりに報酬金を高めに設定しているケースもあります。表面的な金額だけで判断せず、全体の総額で比較検討する視点を持つことが重要です。着手金は依頼時に一括で支払うこともあれば、分割払いに対応してくれる事務所も増えています。
次に報酬金ですが、これは任意整理の成果に応じて発生する費用です。「減額報酬」は、実際に減額された金額の10%程度を支払う形で設定されることが多く、「解決報酬」として債権者1社につき2〜3万円程度が別途請求される場合もあります。つまり、借金が大幅に減額されたり、過払い金が発覚したりした場合には、報酬金が高額になることも考えられます。ここで注意したいのは、報酬金の「内訳」と「上限」が事務所ごとに異なる点です。例えば、過払い金返還に成功した場合には、返還額の20%前後を成功報酬として支払うケースが一般的ですが、訴訟を起こした場合は25%前後まで上昇する可能性もあります。この部分の詳細は、契約書や重要事項説明書に明記されているはずなので、依頼時にしっかり確認しておきましょう。
実費とは、裁判所への申立費用や書類作成費用、債権者への郵送費、交通費などの、実際にかかる経費を指します。任意整理の場合は裁判所を通さないため、実費自体はそれほど高額にはなりませんが、それでも数千円〜1万円程度は見込んでおく必要があります。もし複数の債権者と交渉が必要で、書類のやり取りが頻繁に発生するようなケースでは、実費が予想以上にかさむこともあるため、事前に「実費の目安」を専門家に尋ねておくと安心です。
このように、任意整理の費用は単純に「○万円」とひとくくりにできるものではありません。着手金・報酬金・実費という3つの要素が組み合わさって総額が決まります。そのため、依頼する段階で「全体でいくらかかるのか」「いつまでに何をどう支払うのか」を明確にしておくことが、後で支払いに困らないためにも重要です。
専門家への費用が払えないとどうなる?知っておくべきリスク
専門家への支払いが滞ると手続きそのものにも深刻な影響が及び、場合によっては取り立ての再開や法的措置といった新たなリスクにつながる可能性があります。費用の支払いができなくなると、大きく分けて専門家との関係が解消される(辞任)、債権者との関係に変化が生じる(取り立て再開)、そして最悪の場合には法的な強制力が伴う措置が取られる、という3つのリスクが段階的に発生します。どの段階も、放置すればするほど状況が悪化していくという点で共通していることを理解しておきましょう。
1.専門家が辞任し手続きが中断される
専門家との契約は委任契約という形で結ばれており、依頼者(あなた)が費用を支払い、専門家が業務を遂行するという相互の義務によって成り立っています。費用の支払いが滞ると、専門家はこの契約を維持することが難しくなり、辞任という形で手続きから離れることが考えられます。
辞任が正式に行われると、それまで進めていた債権者との交渉は中断されてしまいます。任意整理では、専門家が間に入ることで債権者との話し合いがスムーズに進み、利息のカットや返済計画の再構築といった合意形成を目的としています。しかし辞任によって交渉の窓口そのものが失われると、せっかく積み上げてきた交渉の進捗がリセットされてしまうことになるのです。
たとえば、すでに「3年間の分割払いで利息をカットする」という方向で債権者が前向きに検討してくれていたとしても、専門家が辞任してしまえば、その交渉テーブルは白紙に戻ります。債権者側も「交渉相手がいない」状態になるため、態度を硬化させる可能性も否定できません。
また、辞任によって生じるのは交渉の中断だけではありません。多くの場合、専門家が介入していることで債権者からの連絡が止まっていたという状況も変わり、「取り立ての再開」へと直結する事態です。
辞任が起こる前に「今月だけ少し待ってもらえないか」「分割で支払わせてもらえないか」といった相談を専門家にしておくことで、辞任そのものを回避できるケースもあります。一方で、何の連絡もなく支払いを滞らせてしまうと、専門家側も「このまま続けることが難しい」と判断せざるを得なくなります。
2.債権者からの取り立てが再開する
専門家が任意整理を受任すると、債権者に対して「受任通知」というものが送られます。これは法律上、「以後の連絡や請求は依頼者本人ではなく、専門家を通して行ってください」という意思表示であり、実質的に債権者からの直接的な取り立てを止める効果があるものです。
しかし、専門家が辞任すると代理人としての窓口を失うことになります。そのため、辞任が正式に債権者へ通知されると、債権者は再び依頼者(あなた)に対して直接の連絡や請求を行う権利を取り戻すことになり、それまで止まっていた電話や郵便、場合によっては訪問といった形での督促が再び始まる可能性が否定できません。
さらに注意すべきなのは、取り立てが再開される段階では、すでに任意整理がうまく進んでいない状態だと債権者が認識していることです。そのため、再開後の督促は以前よりも厳しい条件を突きつけられたり、短い期間での支払いを求められたりする傾向があります。特に、辞任の前に数か月間支払いが止まっていた場合、その間の遅延損害金なども加算されているため、請求額そのものが増えているケースも少なくありません。
こうした状況に陥ると、「どこに相談すればいいのかわからない」「もう逃げ場がない」と感じてしまい、問題をさらに先送りしてしまう悪循環に陥りがちです。
3.一括請求・強制執行など法的なリスク
取り立てが再開され、それでもなお支払いができない状態が続くと、債権者は最終的に法的な手段に移行する可能性があります。これが「一括請求」や「強制執行」といった、より強制力を伴う措置です。
まず、任意整理の前提として「分割払いで少しずつ返済していく」という合意の可能性がありました。しかし専門家が辞任し、一度交渉が途切れた状態では、債権者は「もう分割では回収できない」と判断します。その結果、残っている借金の全額を一括で返済するよう請求してくることがあります。これが「一括請求」です。
一括請求は、法律上「期限の利益の喪失」という形で行われます。簡単に言えば、「分割で払う権利を失った」という状態です。たとえば元々100万円の借金を月3万円ずつ返済する予定だったとしても、期限の利益を失うと「今すぐ100万円全額を返してください」という請求に変わります。
そして一括請求に応じられない場合、債権者は次の段階として裁判所を通じた法的手続きを進めることがあります。具体的には、支払督促や訴訟を起こし、裁判所から「支払え」という判決や命令を得ることで、強制的に財産を差し押さえる権利を確保するものです。
この段階に入ると、給与の差し押さえや銀行口座の凍結といった強制執行が現実のものとなります。給与が差し押さえられた場合、勤務先にもその事実が通知されるため、職場での信用にも影響が出る可能性があります。また、銀行口座が凍結されると、生活費の引き出しや公共料金の引き落としができなくなり、日常生活そのものが立ち行かなくなるかもしれません。
このような法的措置は、決して脅しではなく、実際に発生しうる現実です。特に、貸金業者やクレジットカードの会社といった債権者は、回収業務の一環として裁判手続きに慣れており、必要と判断すれば迅速に動きます。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、すべての債権者がすぐに強制執行まで進むわけではないという点です。中には、再度の分割交渉に応じてくれる債権者もいれば、状況を説明することで猶予をもらえる場合もあります。しかしそのためには、やはり専門家の力を借りて適切に対応することが不可欠といえます。
任意整理が難しい場合の代替手段|個人再生・自己破産という選択肢
任意整理は「返せる前提」の手続きです。そのため、収入が減った、生活環境が変わったなどの理由で返済継続が困難になった場合は、「任意整理が合わなくなった」と考えるのが自然です。これは失敗ではなく、状況に応じた軌道修正にすぎません。
任意整理の返済負担が難しくなったとき、「もう打つ手がないのでは」と不安に感じる方も多いものです。しかし、任意整理だけが借金解決の方法ではありません。状況によっては、個人再生や自己破産といった裁判所を通じた手続きを選ぶことで、より根本的な解決が可能になります。
個人再生とは
個人再生は、裁判所に申し立てることで借金を大幅に減額(原則5分の1程度)し、残額を原則3年(最長5年)で返済する制度です。債権者の同意がなくても手続きを進められる点が、任意整理との大きな違いです。
また、住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンを支払いながら自宅を残すことも可能です。
ただし、個人再生を利用するには、継続的な収入があること、借金総額が5,000万円以下(住宅ローンを除く)であることなどの条件があります。手続きは複雑で、信用情報への影響(ブラックリスト)や官報掲載といったデメリットも理解しておく必要があります。
自己破産とは
自己破産は、裁判所に申し立てを行い、その後「返済不能」と認められる、つまり免責が許可されることによって、借金の支払い義務を原則すべて免除してもらう手続きです。収入の見込みがなく、返済が現実的でない場合には、破産を検討し、借金をゼロにすることが最も確実な解決方法といえます。
財産がほとんどない場合は「同時廃止」となり、比較的短期間で手続きが終わることもあります。一方、不動産や高額な財産がある場合は「管財事件」となり、処分や費用負担が増える点には注意が必要です。
また、税金や交通事故や離婚の慰謝料など、一部の債務は免除されません。
どちらを選ぶべきか
判断のポイントは以下のとおりです。
- 収入があり、家や財産を守りたい → 個人再生
- 収入の見込みがなく、返済自体が不可能 → 自己破産
迷った場合は、弁護士や司法書士に相談することが重要です。法テラスや無料相談を利用すれば、費用面の不安を抑えながら判断できます。
返済が行き詰まったときこそ、早めに専門家へ相談し、今の状況に合った最善の手段を選ぶことが、再出発への近道となります。
まとめ
任意整理の費用が払えなくなることは、決して珍しいことではありません。また、あなた一人の責任でもない場合も考えられます。生活環境の変化や予期せぬ出費は誰にでも起こりうることです。当初の計画通りにいかないこともあるかもしれません。
大切なのは、「払えない」と感じた時点で、すぐに依頼している事務所に連絡し、正直に状況を伝えることです。多くの専門家は、依頼者の生活再建を第一に考えており、支払い計画の見直しや法テラスへの切り替え、他の債務整理手続きへの変更など、さまざまな選択肢を提案してくれます。
任意整理は、基本的に早い段階で動くほど負担を抑えやすい手続きです。費用面で不安がある場合でも、まずは専門家や公的機関に相談し、自分に合った支払い方法や支援制度を探すことが、借金解決への第一歩となります。くすの木総合法務事務所では、借金解決の専門家として豊富な経験と実績があります。土日を問わず24時間、メールや電話相談を無料で受付しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。











