Last Updated on 2026年1月21日 by 監修者:司法書士 藤田太
任意整理(債務整理)を進めている最中に、「急にお金が必要になったらどうすればいいのか」と不安を感じる方は少なくありません。生活費の不足や突発的な出費が重なると、借入を検討してしまうものです。しかし、任意整理中の新たな借入には、手続きそのものに影響を及ぼすリスクや、将来の返済をさらに苦しくしてしまう落とし穴が潜んでいます。
この記事では、任意整理中にお金が必要になった場合に考えられる選択肢を整理したうえで、安易な借入がなぜ危険なのか、知っておくべき注意点や現実的な対処方法について解説します。
任意整理中のお金の制約|基本的な仕組みを理解しよう
任意整理を進めていると、「急な出費にどう対応すればいいのか」という不安を抱える方は少なくありません。家電の故障や医療費、冠婚葬祭など、思いがけないタイミングで数万円単位の支出が必要になることは、誰にでも起こり得ます。
ただし、任意整理を行うことで、クレジットカードやローンなど一部の金融サービスが利用しにくくなるのは事実です。これは任意整理という手続きの性質上、信用情報に影響が及ぶためであり、決して特別な事情ではありません。
ここでは、任意整理中に生じるお金の制約について解説していきます。なぜカードやローンが使えなくなるのか、その制約はいつまで続くのか、 その仕組みを正しく理解しておきましょう。
任意整理後にお金が足りなくなる理由
任意整理を終えたあと、「返済は軽くなったはずなのに、なぜかお金が足りない」と感じる方は少なくありません。これは珍しいことではなく、任意整理の仕組み上、起こりやすい状況でもあります。
まず理解しておきたいのは、任意整理は借金の利息や返済条件を調整する手続きであり、生活費そのものを減らすものではないということです。家賃や光熱費、食費、通信費といった固定費が高いままだと、返済額が減っても家計全体に余裕は生まれにくくなります。
また、任意整理後は信用情報に影響が出るため、多くの場合でクレジットカードやローンが使えなくなります。その結果、これまでカード払いや分割払いで対応していた支出を、すべて現金で支払いをしなければなりません。これにより、日常の出費でも「お金が一気に減る」と感じやすくなります。
特に負担になるのが、病気やケガによる医療費、冠婚葬祭、家電の故障など、突然まとまったお金が必要になる場面です。任意整理後は新たな借入が難しいため、こうした突発的な支出を貯蓄でカバーできないと、家計が一気に苦しくなります。
なぜクレジットカードやローンが使えないのか
任意整理を開始すると、多くの場合、クレジットカードやローンが利用できなくなります。これは、法律で一律に利用禁止とされているわけではありませんが、金融機関の審査実務上、ほぼ共通して起こる現象です。
① 信用情報に「債務整理の事実」が登録されるため
任意整理を行うと、その事実が信用情報機関に登録されます。登録されるのは「任意整理中」という表現そのものではなく、延滞や債務整理があった事実です。
クレジットカード会社や金融機関は、新たなカード発行やローン審査の際に信用情報を確認します。
そこで債務整理の履歴が確認されると、
・返済能力に懸念がある
・現在、返済計画を立て直している最中である
と判断され、新たな借入やクレジットの提供を見送るのが一般的です。
② 法律上の義務ではなく、金融機関のリスク管理
クレジットカードやローンの利用制限は、法律で義務づけられているものではありません。あくまで、金融機関がリスク管理の観点から独自に行っている判断です。ただし、業界全体で共通した基準が採用されているため、「どこなら借りられる」という例外は、実務上ほとんど期待できません。
③ 既存のクレジットカードが使えなくなる理由
すでに持っているクレジットカードについても、次のような理由で利用停止となることがあります。
・任意整理の対象に含めたカード会社である場合
・定期的な「途上与信(利用状況の再審査)」で信用情報が確認された場合
これは、新たな利用によって債務が増え、生活再建の妨げになることを防ぐための措置です。そのため、「罰」というよりも、実際には家計を守るためのブレーキという側面を持っています。また、クレジットカードの代わりにデビットカードを利用することも方法のひとつです。
④ 任意整理の対象外にしたカードは使える?
任意整理の対象に含めなかった金融機関のカードや口座は、一時的に利用できるケースもあります。
ただし、
・信用情報が更新されたタイミング
・各社の審査方針の変更
によって、突然利用停止となる可能性は常にあります。 「今は使えているから大丈夫」と過信するのは危険です。
任意整理中にカードやローンの利用が不可能になるは、金融機関側の「信用力が一時的に低下している」という判断や、借り手自身が再び返済に苦しまないようにするための仕組み、この両面によるものです。
焦って新たな借入先を探すのではなく、
・現在の収支バランスを整理する
・現金ベースの生活に切り替える
・困ったときに相談できる窓口(専門家・公的制度)を把握する
こうした対応が、最も安全で現実的な選択だといえるでしょう。
信用情報への影響と回復までの期間
任意整理を行うと、信用情報機関に「返済に関する事故情報(債務整理に関連する情報)」が登録されます。この情報は、金融機関がローンやクレジットカードの審査を行う際に参照されます。
一般に「ブラックリストに載る」と表現されることもありますが、実際にそのような名簿が存在するわけではありません。あくまで、「信用情報に事故情報が一定期間登録されている状態」を指す俗称です。
信用情報が登録される主な機関
任意整理に関する情報は、以下の信用情報機関にそれぞれ登録・共有されます。
・JICC(日本信用情報機構)
主に消費者金融・信販会社が加盟
・CIC(指定信用情報機関)
主にクレジットカード会社が加盟
・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
銀行・信用金庫などが加盟
信用情報が残る期間の目安
信用情報が登録される期間は、機関ごとに異なりますが、任意整理の場合は次の理解が一般的です。
・JICC・CIC
任意整理に関する情報は、完済からおおむね5年程度で削除されるのが通常です。
・KSC(銀行系)
任意整理については、原則として完済後5年程度が目安とされています。
※「最長10年」という期間は、自己破産など官報掲載を伴う手続きの場合に問題となるもので、任意整理そのものが10年間記録され続けるわけではありません。
つまり、完済すればすぐに信用が回復するわけではなく、完済後も一定期間はカード作成や借入が難しい状態が続く、と考えた方が確実です。
信用情報が回復するまでの期間は、不自由に感じるかもしれません。しかし、この期間は決して無駄ではなく、カードや借入に頼らない生活習慣を身につけるための準備期間と捉えることができます。
たとえば、
・毎月の支出を把握する
・固定費を見直す
・少額でも貯蓄の仕組みを作る
こうした取り組みを重ねることで、信用情報が回復した後も、同じ問題を繰り返さずに済むようになります。
返済遅延には注意が必要
なお、任意整理後の返済が滞ると、新たに「延滞情報」が信用情報に登録される可能性があります。これは、任意整理とは別の事故情報として扱われ、回復までの期間が延びる原因にもなります。生活が苦しくなった場合でも、返済を放置するのではなく、早めに依頼している弁護士や司法書士に相談することが重要です。
任意整理中でもお金を用意できる?借入が難しい理由と現実的な選択肢
任意整理中に急な出費が重なり、「もうどこからもお金を用意できないのでは」と不安になる方は少なくありません。実際、信用情報に事故情報が登録されている状態では、銀行や大手消費者金融の審査に通る可能性は極めて低くなります。
ただし、「すべての方法でお金を用意できなくなる」というわけではありません。任意整理は、弁護士や司法書士を通じて特定の債権者と返済条件を見直す手続きであり、信用情報を利用しない仕組みのサービスや、借入以外の資金確保手段であれば、状況次第で利用できる余地があります。ここでは、任意整理中にお金が必要になった場合の選択肢について解説します。
整理対象外の金融機関からの借入について
任意整理は、すべての借入先を一律に整理しなければならない手続きではありません。実務上は、依頼者本人と弁護士・司法書士が相談のうえで、整理の対象とする債権者を選択することが可能です。
たとえば、「A社・B社は任意整理の対象とし、C社のカードローンは対象外とする」といった対応が取られることもあります。この場合、対象外とした借入先については、返済を継続している限り、形式上は契約が存続します。ただし、これをもって「今後も自由に利用できる」と考えるのは危険です。
整理対象外でも慎重になるべき理由
① 返済負担が増えるリスク
任意整理中に対象外の金融機関から追加で借入を行うと、その分だけ毎月の返済負担が増加します。任意整理の本来の目的は、返済総額や月々の負担を軽減し、安定した完済を目指すことです。
新たな借入は、この目的に逆行し、
・家計が再び圧迫される
・他の返済に支障が出る
といったリスクを高めます。
② 途上与信による利用停止の可能性
クレジットカード会社や貸金業者は、定期的に信用情報を確認(途上与信)しています。
この過程で、他社に対する債務整理の事実が把握されると、
・利用限度額の引き下げ
・新規利用の停止
・カードの解約
といった対応が取られることがあります。「整理対象外だから安心」と考えていると、突然使えなくなる可能性がある点には注意が必要です。ただし、「必ず一括返済を求められる」とまでは言えず、対応は各社の判断によります。
③ 総量規制による制限
貸金業法では、総量規制により、原則として年収の3分の1を超える貸付が禁止されています。
任意整理の対象外であっても、
・他社借入を含めた総借入額
・年収とのバランス
によっては、法律上、新たな貸付を受けることができません。たとえば、年収240万円の場合、総借入額が80万円を超えていれば、新規借入は原則不可となります。
整理対象外の金融機関からの借入は、一見すると現実的な選択肢に見えるかもしれません。しかし実際には、いつ利用停止になるか分からない、返済計画が崩れるリスクが高いという不安定さを常に抱える選択肢でもあります。どうしても一時的な資金が必要な場合であっても、借入額が返済能力の範囲内か、任意整理後の返済計画に無理が生じないかを慎重に確認することが不可欠です。
無理な借入を重ねると、任意整理自体が立ち行かなくなり、結果として自己破産など、より重い手続きを検討せざるを得なくなる可能性もあります。
中小消費者金融・街金の現実と注意点
大手消費者金融での借入が難しい場合、選択肢として挙がるのが中小消費者金融(いわゆる街金)です。中小業者は大手と違い、審査基準が画一的でないことがあり、申込者の状況を個別に見たうえで判断するケースもあります。
ただし、信用情報を確認しないわけではありません。任意整理中は信用情報に事故情報が登録されていることが多く、審査に通る可能性は一般に高くありません。仮に借入できたとしても、次の点に注意が必要です。
注意点① 高金利になりやすい
中小消費者金融では、金利が年18%前後に設定されるケースが見られます。これは利息制限法の上限(借入額により上限が異なる)の範囲内であることが多い一方、返済期間が長引くと利息負担が大きくなりやすい点がデメリットです。
注意点② ヤミ金(無登録業者)に要注意
中小消費者金融を利用する際は、貸金業登録の有無を必ず確認してください。正規の貸金業者であれば、金融庁または都道府県に登録されており、広告やウェブサイト等に登録番号が表示されています。
・登録番号がない
・番号の形式が不自然
・登録番号があっても実在しない
といった場合は、ヤミ金の可能性があります。ヤミ金は「任意整理中でも即日融資」「ブラックでもOK」などの言葉で勧誘し、違法な高金利や違法な取り立てを行うことがあります。関わると被害が拡大しやすいため、絶対に利用しないでください。
注意点③ 任意整理後の返済計画が崩れるリスク
任意整理中に新たな借入をすると、月々の返済負担が増え、和解に基づく返済が滞るリスクが高まります。返済が難しくなれば、
・返済条件の再調整(再交渉)が必要になる
・手続方針を見直し、個人再生・自己破産など別手続を検討する
といった状況に発展する可能性があります。
また、依頼している弁護士・司法書士に無断で借入をすると、状況把握が遅れ、結果的に対応が難しくなることもあります。中小消費者金融の利用を検討する場合は、事前に担当の専門家へ相談し、現実的に返済可能かを確認したうえで判断することが重要です。
街金・中小消費者金融は、状況によっては一時的な資金確保の手段になり得ますが、利用には慎重さが求められます。判断の軸は次の3点です。
1.金利(利息負担)
2.業者の適法性・信頼性(貸金業登録)
3.任意整理後の返済計画への影響
安易な借入は家計再建を遠ざけることがあるため、必ずリスクも踏まえて検討しましょう。
質屋・不用品買取による即金化
任意整理中で信用情報に事故情報が登録されている場合でも、質屋や不用品買取サービスを利用すること自体は可能です。これらは、銀行や消費者金融のような「信用を前提とした借入」とは異なり、物品を担保にした取引や売却によって現金を得る仕組みであるため、信用情報の照会が行われません。
そのため、任意整理中・債務整理中であっても、比較的利用しやすい資金確保手段といえます。ただし、利用にあたっては仕組みとリスクを正しく理解しておく必要があります。
質屋の仕組みと注意点
質屋では、貴金属・ブランド品・時計・家電製品などの物品を預け、その査定額の範囲内でお金を借りることができます。
・預けた品物は「質物(しちもつ)」と呼ばれます
・一定期間内に元金と質料(利息に相当するもの)を支払えば、品物を取り戻せます
・期限までに返済できなかった場合、品物は質屋に帰属し、それ以上の返済義務は生じません
この点は、取り立てや督促が行われないため、精神的な負担が比較的小さいという特徴があります。
なお、質屋の質料(利息)は、質屋営業法により上限が定められており、月利最大9%とされています。年利換算すると高水準になるため、短期間での利用が前提となります。長期間預けたままにすると、利息相当額が大きくなり、結果的に品物を手放すことになる可能性が高くなります。
不用品買取サービスの特徴
不用品買取サービスは、質屋とは異なり、物品を売却して現金化する方法です。
古着・家電・ゲーム機・書籍など、幅広い品目が対象で、リサイクルショップや宅配買取を利用すれば、査定後すぐに現金を受け取れる場合もあります。また、フリマアプリ(メルカリ・ヤフオク等)を利用すれば自分で価格設定できますが、現金化までに時間がかかることがあり、その特徴を理解しておきましょう。
ただし、買取価格は査定基準や需要によって大きく左右されます。特に家電や衣類は、想定よりも低い金額になることも珍しくありません。また、一度売却すると原則として品物は戻らないため、本当に手放して問題ないものか、冷静な判断が必要です。
利用にあたっての注意点
質屋や不用品買取は、任意整理中でも利用しやすい現金調達手段ですが、あくまで一時的な対応策にとどまります。繰り返し利用すると、次第に手元の資産が減り、生活再建がかえって難しくなるおそれがあります。「今月だけ乗り切れば収入が入る」「一時的な医療費を補う」など、明確な見通しがある場合に限定して利用し、それとあわせて、家計を見直し、弁護士・司法書士など専門家への相談を並行して進めることが重要です。
任意整理中に新規借入するとどうなる?知っておくべきリスクと注意点
任意整理は、弁護士や司法書士を通じて債権者と交渉し、利息のカットや返済期間の調整を行い、借金をこれ以上増やさずに完済を目指す手続きです。債務者と債権者の信頼関係によって成り立っているため、手続きの途中で新たな借入を行うと、返済計画に無理が生じたり、手続きを円滑に進めるうえで支障が出る可能性があります。
ここでは、任意整理中に新たに借り入れた場合に起こり得る具体的な影響や、注意すべきポイントについて解説します。
債務整理が行き詰まるリスクと一括請求の可能性
任意整理で債権者と和解が成立すると、多くの場合、毎月一定額を分割で返済していくことになります。この和解内容には、一般に「期限の利益喪失条項」が盛り込まれています。これは、約束どおりの返済が継続できなくなった場合、残っている債務について分割払いの権利(期限の利益)を失い、残額を一括で請求される可能性があるという条項です。
期限の利益を失う主なきっかけ
実務上、次のような事情があると、期限の利益喪失を主張される可能性が高くなります。
・返済を複数回にわたって滞納した場合
・滞納が長期間に及び、改善の見込みがないと判断された場合
なお、「新たに借入をしたこと」自体が直ちに期限の利益喪失につながるわけではありません。ただし、新規借入によって返済が滞り、その結果として和解条件を守れなくなった場合には、債権者が一括請求に踏み切る可能性があります。
一括請求された場合の影響
一括請求を受けた場合、残債務の全額を短期間で支払うことが求められます。現実的に支払いができない場合、債権者が裁判手続きを検討するケースもあります。
裁判で債権者の請求が認められ、確定判決などの債務名義が取得されると、
・給与の差押え
・預貯金口座の差押え
といった強制執行が行われる可能性があります。これにより、生活への影響が大きくなったり、状況によっては職場に知られるリスクが生じることもあります。
任意整理は、弁護士や司法書士が「これ以上借金を増やさず、和解内容を守る」ことを前提に交渉しています。そのため、無断で新規借入を行い、返済状況が悪化した場合には、手続方針の見直しだけでなく、他の債務整理手続(個人再生・自己破産など)の検討が必要になるかもしれません。新規借入をしただけで直ちに辞任されるわけではありませんが、 重要なのは、状況を隠さず、早めに専門家へ相談することです。
借金が増える悪循環の危険性
新しく借りたお金で、今月の返済を何とか乗り切ることは、一見すると問題を解決できたように見えますが、実際には返済すべき借金の総額が増えただけというケースがほとんどです。来月も再来月も返済日は必ずやってきます。そして、新たに借りた分についても、元金と利息を含めた返済義務が生じます。その結果、毎月の支出は減るどころか、むしろ増えていくことになります。
たとえば、任意整理によって月3万円ずつ返済している状況で、その支払いが難しくなり、別の消費者金融から5万円を借りたとします。一時的に手元資金は増えますが、その5万円にも利息がつきます。翌月以降は、
・任意整理の返済:3万円
・新規借入の返済:元金+利息
という形で、返済負担が二重にのしかかることになります。結果として、「また足りない → また借りる」という流れに陥ることになりかねません。
このように、借金で借金を返す状態は一般に「自転車操業」と呼ばれ、長く続ければ資金繰りが破綻するリスクが非常に高くなります。借入先が増えるほど返済管理は複雑になり、
・返済日を把握しきれない
・通知や請求を見落とす
・気づかないうちに延滞していた
といった事態になってしまいます。
借金で借金を返す構図は、どこかで断ち切らなければ必ず限界が来ます。資金繰りが厳しくなった時点で、新たな借入に走る前に、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
任意整理中に絶対NG!危険な資金調達法とは?
任意整理中は、新たな借入が難しくなるため、生活費や急な出費に悩む場面が出てくるかもしれません。しかし、その状況につけ込み、あなたの弱みに漬け込む業者が存在することも事実です。安易に手を出してしまうと、法外な利息を請求されたり、違法な取り立てを受けたりするなど、任意整理では解決できない深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
せっかく任意整理という再スタートを切ったにもかかわらず、誤った選択によって状況を悪化させてしまっては本末転倒です。ここででは、任意整理中に特に注意すべき違法・危険な資金調達法と、その具体的なリスクについて解説していきます。トラブルを未然に防ぐためにも、ぜひ参考にしてください。
闇金の実態とその危険性
闇金とは、貸金業の登録を受けずに違法な貸付を行う業者、または利息制限法・出資法で定められた上限を超える金利で貸付を行う業者の総称です。正規の貸金業者は、金融庁または都道府県への登録が義務づけられており、利息にも厳しい上限が設けられています。
法律上の金利上限は、
・利息制限法:借入額に応じて年15%~20%
・出資法:年20%を超える金利は刑事罰の対象
とされています。闇金はこれらを無視し、年利数百%に相当するような極端に高い利息を要求するケースも少なくありません。
たとえば、「10日で1割(トイチ)」と呼ばれる条件は、年利換算で約365%に相当します。このような条件で借入をすると、10万円を借りただけでも、短期間で返済額が急激に膨らみ、数か月後には返済不能に陥る可能性も否定できません。
闇金の典型的な手口
闇金被害者の多くが口にするのが、「最初は親切だった」ということです。契約当初は丁寧で低姿勢な対応を見せ、安心させたうえで貸付を行います。しかし、返済が少しでも遅れると態度が一変するケースが多く見られます。
具体的には、
・早朝・深夜を問わない執拗な電話
・職場や家族への連絡
・自宅への押しかけ
・SNSや連絡先情報を利用した嫌がらせ
など、貸金業法や刑法に違反する取り立て行為が行われることもあります。
任意整理中の人が狙われやすい理由
任意整理中で信用情報に事故情報が登録されている人は、闇金にとって格好のターゲットになりやすい傾向があります。「どうせ正規業者では借りられないだろう」という弱みにつけ込み、契約書を作成しないまま金銭を渡すケースもあります。
契約内容が書面に残らないため、
・実際の借入額が分からなくなる
・利息や返済条件を一方的に変更される
・「そんな条件は聞いていない」と主張しても証拠が残らない
といった状況に陥りやすく、被害が拡大しがちです。
闇金に一度関わると、自力で抜け出すのは非常に困難になります。返済のために別の闇金から借りる、いわゆる「闇金多重債務」に陥るケースも多く、任意整理による生活再建どころではなくなってしまいます。また、恐怖心や羞恥心から、警察や専門家への相談をためらい、被害が長期化・深刻化する例も後を絶ちません。
もし現在、闇金から借りそうになっている、すでに闇金から借りてしまった、という状況であれば、一人で抱え込まず、早急に弁護士や司法書士に相談することが最優先です。 闇金問題は、迷わず専門家の力を借りましょう。
個人間融資やアプリ利用のリスク
近年、SNSやマッチングアプリ、掲示板などを通じた「個人間融資」と呼ばれる手法が広がっています。X(旧Twitter)やInstagram、LINEなどで「お金を貸します」「審査なし・即日融資」といった言葉を使い、個人を名乗って直接やり取りを持ちかけてくるのが典型的な特徴です。
一見すると「業者ではなく個人が相手だから安全そう」と感じてしまいがちですが、実際には、闇金業者や詐欺グループが個人を装っているケースも多く、非常に危険な取引形態といえます。
個人間融資で多い典型的な被害例
① 保証金・手数料名目の詐取
「融資の前に保証金が必要」「手続き費用を先に払ってほしい」などと言われ、先に金銭を振り込ませたものの、実際には融資が行われないという詐欺的手口です。一度支払ってしまうと連絡が取れなくなる、あるいはさらに追加請求されるケースもあります。
② 性的要求・脅迫(いわゆる「ひととき融資」)
融資の条件として、
・裸体やわいせつな写真の送付
・身分証と顔写真を一緒に撮影するよう要求
といった指示を出し、その後「返済しなければ画像を拡散する」と脅迫するケースが報告されています。
これは、性的被害・恐喝・脅迫に該当する可能性が高い犯罪行為であり、「ひととき融資」と呼ばれる極めて悪質な手口です。被害者が羞恥心や恐怖から相談できず、被害が長期化する傾向があります。
③ 口座悪用・犯罪への加担リスク
個人を装った相手が、銀行口座の情報やキャッシュカードや暗証番号を聞き出し、不正に口座を利用するケースもあります。また、「報酬を払うから口座を貸してほしい」などと言われ、詐欺グループの受け子・出し子として犯罪に加担させられる例もあります。一度でも口座が犯罪に使われると、金融機関から口座を凍結されたり、将来の口座開設が困難になるなど、長期的な悪影響が生じる可能性があります。
個人間融資は、法律の規制を逃れるためにあえて「個人」を装っているだけの場合も多く、実態としては組織的に動いている悪質業者である可能性も否定できません。
特に、任意整理中であることが相手に知られると、「他では借りられないはずだ」と弱みにつけ込まれ、不利な条件を強要されやすくなります。SNSやアプリ経由での融資の話は、どれほど親切そうに見えても、どれほど切迫した状況であっても、応じてはいけません。
クレジットカード現金化が違法になる理由
「クレジットカード現金化」とは、クレジットカードのショッピング枠を使って商品を購入し、それを業者に売却するなどして現金を得る行為を指します。インターネット上では「最短30分で現金化」「審査不要」といった広告を見かけることがありますが、この行為は非常に高いリスクを伴う危険な手段です。
クレジットカード現金化は、カード会社の利用規約に明確に違反する行為であることに加え、手法や状況によっては、違法行為(犯罪)と評価される可能性もあります。
クレジットカード現金化の主なリスク
① 高額な手数料による実質的な損失
現金化業者は、利用者に商品をカードで購入させ、その商品を「買い取る」形で現金を渡します。しかし、10万円分の商品を購入しても、実際に受け取れる現金は7〜8万円程度にとどまることが多く、2〜3万円相当が手数料として差し引かれます。
翌月にはカード会社から10万円の請求が来るため、極めて割高な資金調達であり、返済負担を重くするだけです。
② カードの利用停止・強制解約・一括請求
クレジットカードのショッピング枠は、商品やサービスの購入を目的として提供されているものです。現金を得る目的で利用する行為は、ほぼすべてのカード会社の利用規約で禁止されています。
発覚した場合、
・カードの即時利用停止
・強制解約
・残債の一括請求
といった厳しい措置が取られる可能性があります。
③ 場合によっては違法行為と評価される可能性
クレジットカード現金化は、常に犯罪になるわけではありませんが、
・購入の意思がないのに虚偽の取引を装う
・業者と通謀して不正利用を行う
といった場合には、詐欺罪や詐欺的行為として問題視される可能性があります。また、現金化業者側は、貸金業法違反などで摘発される例もあります。
④ 任意整理中の場合の深刻な影響
任意整理中に、手元に残っているクレジットカードは、生活を維持するための重要な手段であることもあります。しかし、そのカードを現金化目的で使用すれば、自らそのライフラインを失う行為になります。
カード会社は不正利用を厳しく監視しており、現金化特有の取引パターンは比較的発覚しやすいのが実情です。強制解約や一括請求を受ければ、任意整理で立てた返済計画が破綻するリスクも高まります。
クレジットカード現金化は、経済的負担が極めて重く、状況次第で違法と評価される可能性があるということから、任意整理中はもちろん、どのような状況でも避けるべき危険な資金調達法です。目先の現金と引き換えに、信用・生活・再建計画をすべて失うおそれがある行為だと理解してください。
闇バイト等の危険性
近年、SNSやネット掲示板を通じて「高額報酬」「即日払い」「簡単な仕事」といった条件を掲げる、いわゆる「闇バイト」の募集が広がっています。特に、若年層や経済的に困窮している人、任意整理中で「すぐに現金が必要」という状況にある人が、こうした勧誘の対象になりやすい傾向があります。しかし、闇バイトの実態は、知らないうちに犯罪行為に関与させられる極めて危険なものです。一時的な収入と引き換えに、取り返しのつかない結果を招くおそれがあります。
闇バイトに潜む主なリスク
① 犯罪に加担してしまうリスク
闇バイトで多く見られるのが、いわゆる
・「受け子」(被害者から現金やカードを受け取る役割)
・「出し子」(ATMから現金を引き出す役割)
・「運び屋」(違法薬物や盗品などを運搬する役割)
といったものです。
募集時には「荷物を受け取るだけ」「指定された物を運ぶだけ」などと説明され、犯罪であることを意図的に伏せて勧誘されるケースが多くあります。
たとえ「犯罪だと知らなかった」「騙されていた」と感じていても、犯罪性を認識できたと判断される場合や、注意すれば違法性に気づけたと評価される場合には、共犯(幇助・実行行為)として処罰の対象となる可能性があります。特殊詐欺や窃盗、薬物犯罪などに関与した場合、刑事責任を問われ、前科がつくことで、その後の就職や生活再建に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
② 個人情報を握られ、脅迫されるリスク
闇バイトに応募すると、身分証の画像や住所、連絡先などの個人情報を相手に渡してしまうケースが少なくありません。一度関わると、
・「次もやらなければ警察に通報する」
・「家族や職場にばらす」
といった形で脅迫され、抜け出せなくなる事例も報告されています。
犯罪組織は、一度でも関与した人物を「使い捨て」にせず、繰り返し利用しようとする傾向があります。「一度だけ」のつもりが、いつの間にか深刻な状況に巻き込まれてしまうことも珍しくありません。どれほど生活が苦しくても、違法性が疑われる仕事・内容が不透明な仕事には絶対に手を出さないことが何より重要です。
今すぐ生活費が足りない時の安全な対処法
任意整理を行っているということは、すでに借金をこれ以上増やさず、返済計画を立て直す段階に入っているということです。そのため、実務上は新たな借入は慎重に考えるべき状況といえるでしょう。
こうしたときに大切なのは、「借りるしかない」と思い込まず、利用できる制度や現実的な手段を組み合わせて乗り切る視点を持つことです。実際、生活に困窮した人を支援するために、国や自治体には一時的な給付や貸付、相談制度が用意されています。ここでは、生活費が足りないときに取れるリスクの少ない対処法について解説します。
公的融資・救済制度の活用
まず知っておきたいのが、社会福祉協議会(社協)が窓口となる「生活福祉資金貸付制度」です。この制度は、低所得世帯、高齢者世帯、障害者世帯など、生活に困窮している世帯を対象に、生活費や一時的な資金を無利子または低利で貸し付ける公的制度です。
代表的なものとして、次のような制度があります。
・緊急小口資金
急な医療費、失業や収入減による生活費不足など、緊急性の高い場合に利用されます。
貸付額は原則として上限10万円程度とされています(※世帯状況により異なる場合あり)。
・総合支援資金(生活支援費)
失業や収入減などにより生活再建が必要な場合に、一定期間の生活費として貸し付けられます。
貸付額や期間は、世帯構成や自治体の運用により異なりますが、月数万円〜十数万円程度を一定期間とするケースが一般的です。
生活福祉資金貸付制度では、信用情報機関の登録内容(いわゆるブラック情報)を直接的な審査項目としていないため、任意整理中であっても、状況次第では相談・申請が可能です。そのため、「借入が一切できない」と諦める前に、一度相談してみる価値はあります。
ただし、これらの制度は申請から貸付までに一定の時間を要することが多く、実務上は2週間〜1か月程度かかるケースも珍しくありません。そのため、「今日・明日に現金が必要」というような緊急性が極めて高い場合には、間に合わない可能性がある点には注意が必要です。
生活保護という選択肢について
生活に困窮している場合、生活保護の申請も正当な選択肢の一つです。生活保護は「特別な人の制度」ではなく、収入や資産が最低生活費を下回る場合に、誰でも申請できる権利があります。
任意整理中であっても、
・収入が基準を下回っている
・保有資産が生活維持に使えない
といった事情があれば、生活保護の申請自体が否定されるわけではありません。
ただし、生活保護受給中は、原則として借金の返済に保護費を充てることは認められていません。そのため、任意整理の和解内容との関係については、事前に弁護士や司法書士と相談し、返済の一時停止や手続方針の見直しなどを検討する必要があります。
このほかにも、
・住居確保給付金
・緊急一時資金・生活困窮者支援金
・自治体独自の給付・貸付制度
など、自治体ごとに独自の支援策が用意されている場合があります。内容や要件は地域によって大きく異なるため、まずはお住まいの市区町村の福祉課や社会福祉協議会に電話で問い合わせてみると、思いがけず利用できる制度が見つかることもあります。
専門家(弁護士・司法書士)への相談が最優先
「お金を借りたい」と感じるほど生活が苦しくなっている場合、それは現在の返済計画に無理が生じ始めているサインであることも少なくありません。こうした状況では、自己判断で動く前に、任意整理を依頼している弁護士や司法書士に早めに相談することが極めて重要です。
① 返済計画の見直し(再交渉)
現在の返済額が収入や生活状況に見合っていない場合、債権者と再度交渉し、返済条件の見直しを行うことを検討します。一般に「再和解」と呼ばれることもありますが、これは法的な特別手続きではなく、任意整理の内容を再調整する実務上の対応です。
② 他の債務整理手続きへの切り替え
状況によっては、任意整理を続けること自体が難しい場合もあります。そのようなときには、他の種類の債務整理手続きを検討することも選択肢となります。
・個人再生(借金を大幅に減額し、原則3~5年で返済)
個人再生(民事再生)は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3〜5年で分割返済していく手続きです。住宅ローンを除いた借金を5分の1程度まで減らせるケースもあり、マイホームを手放さずに済む可能性があるのが大きな特徴です。安定した収入があることが前提となるため、会社員や自営業で継続収入が見込める人に向いています。借金は残りますが、現実的な金額に調整して立て直しを目指す制度です。
・自己破産(支払不能の場合に免責の許可により借金の支払義務を免除)
自己破産は、裁判所に申し立てて借金の支払義務を原則すべて免除してもらう手続きです。返済不能と判断された場合に利用でき、生活をゼロから立て直すための最終的な制度ともいえます。一部の財産は処分対象になりますが、生活に必要な最低限の財産は残されます。借金はなくなりますが、一定期間はクレジットカードやローンが使えなくなるなどの制約があります。それでも、再出発のために法律が認めた正当な救済手段です。ただし、離婚や交通事故などの慰謝料は、原則として免責の対象にはなりません。
これらは人生の「失敗」ではなく、生活を立て直すために法律が用意している正当な制度です。
③ 公的制度・生活支援策の案内
専門家は、借金の整理だけでなく、
・利用可能な公的支援制度
・返済スケジュールの調整方法
・家計の立て直しに関する助言
などについても、状況に応じたアドバイスをしてくれます。
任意整理中に新たな借入を行うと、その結果として返済が滞った場合、和解条件を守れなくなり、一括請求を受けるリスクが高まることがあります。新規借入そのものが直ちに違法になるわけではありませんが、返済計画に大きな影響を与える行為であることは間違いありません。
だからこそ、借入を検討する前に専門家へ相談することが、最も安全で現実的な判断につながります。
もし、今依頼している専門家に相談しにくいと感じている場合は、別の弁護士や司法書士にセカンドオピニオンを求めることも可能です。多くの事務所では無料相談を実施しているため、まずは話を聞いてもらうだけでも構いません。一人で抱え込まず、早めに専門家の力を借りることをおすすめします。
まとめ
任意整理(債務整理)を進めている最中に、「急な出費が重なってお金が足りない」「このままでは生活費が回らない」と不安になる方は少なくありません。医療費や冠婚葬祭、収入の一時的な減少など、どれだけ計画を立てていても想定外の事態は起こります。
ただし、任意整理中の新たな借入には注意が必要です。任意整理は、これ以上借金を増やさず、決められた返済計画を守ることを前提とした手続きです。そのため、安易に借入をすると返済負担が増え、和解条件を守れなくなるリスクが高まります。場合によっては、一括請求や手続き方針の見直しが必要になることもあります。
一方で、「借りるしかない」と思い込む必要はありません。公的支援制度や一時的な生活支援、家族や知人からの協力、短期の収入確保など、借入以外にも選択肢は存在します。特に、公的制度は低利または無利子で利用できる場合があり、状況次第では大きな助けになります。
そして何より重要なのは、一人で抱え込まないことです。借金に悩み、お金が足りないと感じた時点で、任意整理を依頼している弁護士や司法書士に相談すれば、返済計画の見直しや適切な対応策を一緒に考えてもらえます。
くすの木総合法務事務所は、借金問題解決の専門家として豊富な実績と経験があります。土日を問わず24時間、電話相談を無料で受付しております。また、LINEやメールでのご相談もできますので、まずはお気軽にご相談いただきたいと思います。確かな知識であなたをサポートいたします。











