Last Updated on 2026年2月27日 by 監修者:司法書士 藤田太
「生活保護を受けながら借金を整理したい。でも、役所に知られたら保護が打ち切られるのでは?」そんな不安を抱えていませんか?生活保護受給中でも、自己破産などの債務整理手続を利用して借金問題を解決することは可能です。しかし、任意整理や個人再生のように返済を前提とする手続は、生活保護費を返済に充てることができないため、現実には利用が難しいのが実情です。この記事では、生活保護と債務整理の仕組み、よくある誤解、手続き上の注意点に加え、借金の相談窓口や法テラスを利用した弁護士費用の立替・免除制度について、わかりやすくご説明します。
生活保護中の任意整理は可能?|知っておきたい重要ポイント
生活保護を受けながら任意整理を行うこと自体は、法律で一律に禁止されているわけではありません。ただし、任意整理は原則として将来にわたり分割返済を続ける手続きであるため、安定した返済原資がなければ成立が難しいのが実情です。また、生活保護費を借金返済に充てることは適切でないとされており、ケースワーカーから指導を受ける場合もあります。
そのため、生活保護受給中に借金問題を解決する場合は、任意整理だけでなく、自己破産など他の債務整理手続きも含めて検討することが重要です。ここでは、制度の基本的な考え方や注意点、手続き上のポイントを分かりやすく整理します。
法的根拠と基本的な仕組み:なぜ生活保護受給中でも任意整理ができるのか
生活保護法は、受給者が債務整理を行うことを一律に禁止をしているわけではありません。生活保護制度は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することを目的としており、借金問題の解決そのものを妨げる規定はありません。
任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と交渉し、将来利息の減額や返済条件の見直しを行う手続きです。裁判所を通さない私的な交渉手続きであるため、自己破産のように官報公告が行われるものではありません。生活保護受給者であっても、法律上この手続きを利用すること自体は可能です。
ただし、重要な注意点があります。任意整理は原則として「分割で返済を継続する」ことを前提とした手続きです。一方で、生活保護費は最低限度の生活維持のための給付であり、これを借金返済に充てることは適切ではないとされています。そのため、生活保護受給中に任意整理を行う場合は、返済原資をどのように確保するかが大きな課題になります。
実務上は、例えば次のような対応が検討されることがあります。
・返済開始時期を猶予してもらう
・生活保護終了後の返済を前提に和解する
・保護費以外の収入(親族からの援助など)で返済することを前提とする
いずれにしても、ケースワーカーへの事前相談が重要です。
生活保護法第4条の「補足性の原則」は、利用できる資産や能力、他制度の活用を前提とする考え方を示しています。債務整理は生活困窮の原因を解消する手段の一つと考えられる場合もありますが、個別の事情により判断は異なります。したがって、借金問題を抱えている場合は、まず専門家に相談し、自身の状況に合った方法を検討することが重要です。
「支給停止される?」「費用が心配」|よくある誤解を解消
生活保護を受給している方が任意整理を検討する際、特に多い不安は次の二つではないでしょうか。
「役所に知られたら保護が打ち切られるのでは?」
「弁護士費用なんて払えないのでは?」
結論から言えば、いずれも必ずしもそのとおりではありません。 正しい理解をもとに判断することが大切です。
誤解①:任意整理をすると生活保護が打ち切られる
これは非常に多い誤解です。
任意整理を行うこと自体が、直ちに生活保護の停止・廃止理由になるわけではありません。
むしろ、借金問題を放置し督促に追われ続ける状態は、生活の安定や自立の妨げになる可能性があります。そのため、借金問題を整理すること自体は必ずしも否定されるものではありません。
ただし注意点として重要なのは、生活保護費の使途です。
生活保護費は最低限度の生活維持のための給付であり、原則として借金返済に充てることは認められていません。
無断で保護費から返済を行った場合、「不適切な支出」と判断され、指導の対象となる可能性があります。
つまり、
✔ 任意整理を行うこと
✖ 生活保護費から返済をすること
上記の2つは、別の問題です。
任意整理を検討する場合は、事前にケースワーカーへ相談することが望ましいでしょう。
過払い金が発生した場合
任意整理の過程で過払い金が返還された場合、その金額は原則として「収入」として扱われます。
そのため、福祉事務所への報告義務があります。
金額によっては、一時的に保護費が調整(減額や停止)される可能性がありますが、これは制度上の取り扱いです。適切に申告すれば、特別な不利益を受けるものではありません。
誤解②:弁護士費用が高額で払えない
確かに、任意整理には通常、着手金や報酬金が発生し、債権者1社あたり数万円程度の費用がかかることがあります。
しかし、生活保護受給者の方は法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる場合があります。
法テラスを利用した場合
・弁護士費用を立て替えてもらえる
・原則として分割返済が可能
さらに、生活保護受給中は償還(返済)が猶予されることが多く、保護廃止後に返済を開始する運用が一般的です。
(※最終的な判断は法テラスによります)
そのため、今すぐまとまった費用がなくても、専門家へ相談できる可能性は十分あります。
また、司法書士に依頼する場合は、1社あたり元本140万円以下の債務であれば代理人として対応可能です(簡易裁判所の代理権の範囲)。
費用面で抑えられるケースもあります。
「お金がないから相談できない」と決めつけず、まずは無料相談を利用することが現実的な第一歩です。
誤解③:任意整理をすると一生お金を借りられない
任意整理を行うと、信用情報機関に事故情報が登録されます。
一般的には完済から約5年程度、新たな借入れやクレジットカードの作成が難しくなる可能性があります。
ただし、
❌ 一生借りられないわけではありません
⭕ 一定期間経過後は信用情報は回復します
事故情報の登録はあくまで一定期間の制限です。
なお、生活保護受給中は原則として新たな借入れは想定されていないため、実務上大きな支障が生じる場面は多くありません。
将来的に保護を脱却し、安定収入を得られれば、信用を積み直していくことは可能です。
生活保護と任意整理は、正しく理解すれば両立し得る制度です。
大切なのは、
・生活保護費を返済に充てないこと
・ケースワーカーへ適切に報告すること
・法テラスなどの公的制度を活用すること
不安だけで判断せず、正確な情報のもとで専門家に相談することが、生活再建への第一歩になります。
手続きで押さえるべき3つの必須条件|事前相談・無料制度・適切な報告
生活保護受給中でも、任意整理を検討すること自体は直ちに禁止されているわけではありません。
ただし、生活保護費の使い方や収入申告のルールを誤ると、保護費の調整(減額・停止・返還など)の対象となる可能性があります。安心して進めるために、次の3つを押さえておきましょう。
① ケースワーカーへの事前相談
任意整理を考え始めたら、できるだけ早めに担当ケースワーカーへ相談することをおすすめします。法律上の絶対的義務ではありませんが、後のトラブル防止や信頼関係の維持につながります。
相談時には、次の点を整理して伝えるとスムーズです。
・借金の総額と債権者数
・督促の状況
・任意整理を検討している理由(生活再建・精神的負担の軽減など)
・生活保護費を返済に充てない方針であること
生活保護費は最低限度の生活維持のための給付であり、原則として借金返済に充てることは適切ではありません。返済を予定している場合は、その原資(将来の収入や親族援助など)も含めて事前に相談することが大切です。
② 法テラスの民事法律扶助制度を活用する
生活保護受給者は、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる可能性があります(資力などの審査あり)。
利用できた場合、弁護士・司法書士費用を立て替えてもらい、受給中は償還(返済)が猶予・免除される運用が行われることがあります。ただし、最終的な可否や条件は法テラスの判断によります。
一般的な流れは次のとおりです。
・法テラスへ相談予約
・資力要件の確認(生活保護受給証明書の提示など)
・専門家の紹介・面談
・正式依頼となった場合、立替手続きへ
なお、借入原因がギャンブルや浪費であっても、直ちに任意整理ができないわけではありません。ただし、支援の可否は個別事情を踏まえて判断されます。
③ 成立後も福祉事務所への申告を忘れない
任意整理が成立した後も、次の点に注意が必要です。
・就労開始や増収など、収入の変化は速やかに申告する
・親族からの援助や一時的収入は、収入認定の対象になり得る
・過払い金の返還があった場合も原則として申告が必要
・返済開始時期と返済原資は事前に相談する
親族援助や過払い金は「収入」として扱われることが多く、無申告の場合は後に問題となる可能性があります。
任意整理は、生活保護受給者にとって直ちに禁止された手段ではありません。
しかし、
1.ケースワーカーへの早めの相談
2.法テラスなど公的支援の活用
3.収入や援助の適切な申告
この3点を守ることが、安全に進めるための前提です。
【徹底比較】任意整理・自己破産・個人再生|生活保護受給中に選択肢となり得る手続きとは?
生活保護受給中であっても、任意整理・自己破産・個人再生といった債務整理の手続きを検討できる可能性があります。ただし、どの種類の手続きが適しているかは、借金の総額や財産の有無、将来的な収入見込みなどによって大きく異なります。
ここでは、3つの債務整理手続きの仕組みやメリット・注意点を比較し、生活保護受給中の方が検討する際に押さえておくべきポイントを整理します。ご自身の状況に合った選択肢を見つけるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
3つの債務整理方法の比較表:費用・期間・生活保護への影響度
債務整理には主に「任意整理」「自己破産」「個人再生」の3つの方法があります。
それぞれ仕組みや要件が異なり、生活保護を受給している方にとっては、費用負担・収入要件・生活保護制度への影響が特に重要な判断材料となります。
任意整理
任意整理は、弁護士や司法書士が債権者と直接交渉し、将来利息のカットや分割払いへの変更を求める手続きです。裁判所を通さないため、比較的柔軟に進められる特徴があります。
費用は債権者1社あたり3〜5万円程度が目安とされます(事務所により異なります)。
ただし、整理後も元本の返済は継続します。そのため、安定した返済原資が必要です。生活保護費を返済に充てることは原則として認められていないため、生活保護受給中は実質的に利用が難しいケースが多いといえます。
自己破産
自己破産は、裁判所に申し立てを行い、免責許可決定が確定すれば借金の支払義務が免除される手続きです。
生活保護受給中で継続的な返済が困難な場合には、有力な選択肢となることがあります。
費用は同時廃止事件であれば20〜30万円程度が目安ですが、法テラスの民事法律扶助を利用できる場合、立替や償還猶予の対象となることがあります(審査あり)。
財産について
一定以上の財産は処分対象になります。
自由財産として認められる範囲は原則として99万円以下の自由財産ですが、現金は通常20万円以下が基準とされています(裁判所の運用による差あり)。
生活保護の受給自体が、自己破産を理由に直ちに停止されるわけではありません。ただし、過払い金や財産の状況によっては収入認定や資産調査の対象になる場合があります。
個人再生
個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年間(最長5年)で分割返済する制度です。
最低弁済額は法律で定められており、借金額に応じて決まります(「必ず5分の1」ではありません)。
安定した継続収入が必要で、最低弁済額を支払える見込みがなければ認可されません。
費用は30〜50万円程度が目安ですが、事案により異なります。
生活保護受給中は継続収入要件を満たしにくいため、実務上利用が難しいケースが多いといえます。
比較表
| 項目 | 任意整理 | 自己破産 | 個人再生 |
| 費用目安 | 1社3〜5万円 | 20〜30万円程度 | 30〜50万円程度 |
| 手続き期間 | 3〜6ヶ月 | 約6ヶ月〜1年 | 約1年 |
| 裁判所の関与 | なし | あり | あり |
| 借金減額幅 | 将来利息カット中心 | 免責確定で原則全額免除 | 法定基準により大幅減額 |
| 返済の有無 | あり(分割) | 原則なし | あり(原則3年) |
| 継続収入 | 必要 | 原則不要 | 必要 |
| 生活保護との関係 | 返済原資の確保が課題 | 有力な選択肢となる場合あり | 実務上は難しい場合が多い |
| 財産への影響 | 原則なし | 一定以上は処分 | 原則維持可能(清算価値保障あり) |
生活保護受給中で継続的な返済が難しい場合、自己破産が検討対象となることは少なくありません。
ただし、借金額、資産の有無、将来的な就労見込みなどによって最適な手続きは異なります。一律に「この方法がベスト」とは言えないため、まずはケースワーカーや法テラスへのご相談をおすすめします。
借金額別の選択指針|50万円未満/50〜200万円/200万円超
借金の総額によって、現実的に選択できる債務整理の方法は変わります。
ここでは、生活保護受給中の方を前提に、金額帯ごとの一般的な傾向を整理します。
※最終的な判断は、借入内容・財産状況・将来の就労見込み等によって異なります。
① 50万円未満の場合
任意整理を検討できる可能性はある
借金が比較的少額の場合、将来的に就労予定がある、あるいは保護廃止後に安定収入を得られる見込みがある場合には、任意整理を検討できる可能性があります。
ただし重要なのは、生活保護費から返済することは原則認められていないということです。
返済原資が確保できなければ、任意整理は現実的ではありません。
また、親族援助がある場合でも、援助金は収入認定の対象となる可能性があるため、必ず事前にケースワーカーへ相談が必要です。
自己破産も選択肢に入る
金額が50万円未満でも、返済見込みがない場合は自己破産を選ぶこともあります。
金額の大小だけで手続きを決めるものではありません。
法テラスの民事法律扶助を利用できる場合、費用の立替や償還猶予の対象となる可能性があります(審査あり)。
② 50〜200万円の場合
この金額帯になると、生活保護受給中の方にとって任意整理は難しいケースが増えます。
仮に将来利息がカットされても、元本の返済は残るため、安定した返済原資がなければ成立しません。
個人再生について
個人再生は借金を大幅に減額できる制度ですが、最低弁済額は法律で定められており、
原則として 100万円以上(借金総額に応じて増加) となります。
さらに、原則3年間で分割返済できる安定収入が必要です。
生活保護受給中はこの要件を満たしにくいため、実務上は利用が難しいことが多いといえます。
自己破産が有力になることが多い
返済原資がない場合、自己破産が検討対象となるケースは少なくありません。
免責許可決定が確定すれば、借金の支払義務は原則として免除されます。
ただし、
・一定以上の財産は処分対象
・過払い金や資産がある場合は収入認定の対象になる可能性あり
といった点には注意が必要です。
また、自由財産として原則99万円以下は保持可能ですが、現金は通常20万円以下が基準となります(裁判所の運用による差あり)。
③ 200万円超の場合
借金が200万円を超える場合、生活保護受給中で安定収入がない状況では、任意整理や個人再生の実行はより難しくなります。
任意整理の場合
利息がゼロになったとしても、元本返済は必要です。
借金額が大きいほど毎月の返済額も増えるため、返済原資がなければ現実的ではありません。
個人再生の場合
最低弁済額は借金総額に応じて増加します。
3年間で返済できる安定収入がなければ、認可は困難です。
自己破産が検討対象になりやすい
返済見込みがない場合、自己破産が現実的な選択肢となることが多いです。
免責が確定すれば支払義務は免除され、生活再建のスタートを切ることができます。
生活保護受給中であること自体が、自己破産の妨げになるわけではありません。
免責不許可事由について
自己破産には「免責不許可事由」があり、ギャンブルや浪費が原因の借金は問題となることがあります。
ただし、実務上は裁判所が事情を考慮し、「裁量免責」が認められるケースも少なくありません。
一律に免責が認められないわけではないため、自己判断せず専門家に相談することが重要です。
借金額が増えるほど、生活保護受給中の方にとって返済型の手続き(任意整理・個人再生)は難しくなる傾向があります。
しかし、
・金額だけで決まるわけではない
・将来の収入見込みが重要
・財産状況や借入原因も判断材料
となります。
「この金額ならこの手続き」と断定することはできません。
最終的には、個別事情を踏まえて専門家と判断することが、安全かつ確実な方法です。
個人再生が生活保護受給者に適しにくい理由と注意点
(民事再生法に基づく解説)
個人再生は、自己破産のように借金をゼロにする制度ではなく、借金を大幅に減額し、原則3年間で分割返済する手続きです。
一見すると自己破産より穏やかな制度に思えるかもしれません。しかし、生活保護受給中の方にとっては、制度上・実務上ともにハードルが高いケースが多いのが現実です。
ここでは、その理由を民事再生法の要件に基づいて整理します。
① 継続的な収入があることが前提条件
小規模個人再生を利用するには、
「将来において継続的又は反復して収入を得る見込みがあること」
(民事再生法221条1項)
が必要です。
つまり、減額後の債務を安定して返済できる収入が求められます。
生活保護との関係
生活保護費は、健康で文化的な最低限度の生活を維持するための給付です。
その性質上、借金返済に充てることは適切とはされておらず、返済原資とすることは実務上困難です。
そのため、
・保護受給中で就労収入がない
・安定収入の見込みがない
という場合、個人再生の要件を満たさない可能性が高くなります。
② 最低弁済額のハードル
個人再生では、法律で定められた最低弁済額以上を返済しなければなりません。
最低弁済額は借金総額によって決まります。
| 借金総額 | 最低弁済額 |
| 100万円未満 | 全額 |
| 100万円以上〜500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上〜1500万円未満 | 5分の1 |
| 1500万円以上〜3000万円未満 | 300万円 |
(※清算価値保障原則により、保有財産が多い場合はそれ以上になることもあります)
たとえば借金が200万円の場合、最低弁済額は100万円です。
これを原則3年(36回)で返済する必要があるため、月約2万7千円以上の返済能力が求められます。
生活保護受給中の方にとって、この継続的支払いは現実的でない場合が多いでしょう。
③ 財産がない場合、制度メリットが小さい
個人再生の大きなメリットは、住宅ローン特則を利用して自宅を残せることです。
しかし、
・自宅を所有していない
・高額な財産がない
といった場合には、個人再生のメリットは限定的になります。
生活保護制度では、自動車の保有も原則制限されるため(通勤・障害などの例外あり)、
守るべき資産がないケースでは、自己破産との差が小さくなります。
④ 手続きの複雑さと費用
個人再生は、自己破産よりも書類作成が複雑で、家計状況や将来収入の見込みについて詳細な資料提出が求められます。
費用の目安は30〜50万円程度とされますが、事案によって差があります。
法テラスを利用できる場合もありますが、
立替後の償還(返済)については個別判断となり、必ずしも免除されるとは限りません。
個人再生は、
・安定した継続収入がある
・住宅など守りたい財産がある
という方に適した制度です。
生活保護受給中で、返済原資の見込みがない場合には、
制度要件を満たさない可能性が高く、実務上利用が難しいケースが多いといえます。
自己破産という選択肢について
自己破産は、免責許可決定が確定すれば借金の支払義務が免除される制度です。
生活保護受給中であっても申立ては可能であり、
直ちに保護が停止されるわけではありません。
もちろん、財産処分や免責不許可事由などの検討は必要です。
しかし、「破産=人生の終わり」というものではなく、法律上認められた再出発の制度です。
個人再生が適するかどうかは、
・継続収入の有無
・最低弁済額を支払えるか
・守りたい財産があるか
・によって決まります。
生活保護を受けながら借金に悩んでいる場合は、
一人で判断せず、弁護士や司法書士に相談することが重要です。
法テラスなどの公的相談窓口もありますので、まずは正確な情報を得るところから始めてみましょう。
生活保護受給中の任意整理で注意すべきポイント
生活保護を受給しながら任意整理を進める場合は、通常の任意整理とは異なる注意点があります。特に重要なのは、生活保護費は最低限度の生活のための給付であり、原則として借金返済の原資にできないという点です。この点を理解しないまま返済を始めてしまうと、ケースワーカーから指導を受けたり、状況によっては保護費の調整(減額等)の対象となる可能性があります。
ここでは、実際に起こりがちな失敗例を踏まえながら、ケースワーカーとの相談で押さえておくべきポイントや、返済と生活のバランスを崩さないための考え方・工夫をわかりやすく解説します。
うまくいかないケースの共通点3つ
生活保護受給中に任意整理を進めようとしても、途中で行き詰まってしまう方には共通するパターンがあります。多くは、制度理解の不足や事前準備の甘さが原因で、知っていれば回避できた可能性があるものです。ここでは代表的な3つを整理します。
① 返済原資を決めないまま進めてしまう
最も多いのが、返済原資の見通しがないまま任意整理を始めてしまうケースです。
生活保護費は最低限度の生活維持のための給付であり、その趣旨から借金返済の原資として使うことは適切ではなく、制度上も原則として想定されていません。
それにもかかわらず、「任意整理で返済額が下がるから何とかなる」と進めてしまうと、
・和解自体が成立しない
・成立しても早期に滞納する
といった事態になりやすくなります。
滞納が続けば、債権者側が和解を解除し、残額の一括請求に切り替える可能性があります。さらに、状況によっては訴訟等を経て給与等の差押えに至ることもあり得るため、返済原資の設計は最初に固める必要があります。
② ケースワーカーに相談せず進めてしまう
次に多いのが、ケースワーカーへの相談や情報共有をしないまま専門家へ依頼し、手続きを進めるパターンです。
任意整理を行うこと自体は直ちに禁止されるものではありませんが、生活保護受給中は、収入・資産・生活状況などに変化がある場合、福祉事務所に申告・相談することが求められます(生活保護法61条の趣旨)。
事前に共有せずに進めると、
・返済原資が不明確
・親族援助や一時収入の申告漏れ
・保護費を返済に充てているのでは、という疑念
などの誤解を招きやすくなります。
結果として、指導の対象になったり、状況によっては保護費の調整(減額等)や返還を求められる可能性が出てくるため、“隠さない・先に相談する”姿勢が重要です。
③ 生活実態に合わない返済計画で合意してしまう
3つ目は、返済計画が現実の家計に合っていないケースです。任意整理では一般に数年単位で分割返済を行いますが、生活保護受給中は家計に余裕が出にくく、収入増も見込みづらい場合があります。
その状態で「頑張れば払える」と高めの返済額で合意してしまうと、
・食費や医療費など最低限の支出を削る
・生活が不安定になり体調を崩す
・結果的に滞納して和解が崩れる
といった悪循環に陥りがちです。
この3つに共通するのは、現実的な見通しが固まらないまま手続きに踏み切ってしまうことです。任意整理は返済負担を調整する手続きであって、返済責任そのものがなくなるわけではありません。
生活保護受給中は特に、
・返済原資の明確化
・ケースワーカーへの早めの相談
・生活維持を優先した無理のない計画
を前提に、専門家と連携して慎重に進めることが大切です。
収入申告と家計管理|ケースワーカーが確認するポイント
(生活保護法第61条関連)
生活保護を受けている間は、収入や資産、生活状況に変化があった場合に福祉事務所へ届け出る義務があります(生活保護法第61条)。
福祉事務所は、受給要件を満たしているかどうかを確認するため、通帳の写しや家計状況の説明を求めることがあります。これは、不正受給の防止や適正な支給額の算定のために行われるものです。
任意整理を進める場合でも、この届出義務は変わりません。むしろ、返済原資の説明が必要になるため、より丁寧な管理が求められる場面があります。
① 毎月の収支の整合性
ケースワーカーが確認する重要なポイントの一つが、収支の整合性です。
たとえば、
・支給額と支出額が大きく合わない
・毎月一定額の返済があるのに原資の説明がない
といった場合には、その資金がどこから出ているのか確認されることがあります。
ここで説明ができないと、
「未申告の収入があるのではないか」
と、不正受給を疑われる可能性があります。
② 返済原資の扱い
任意整理を行う場合、特に重要なのが返済原資の出所です。
✔ 生活保護費からの返済について
生活保護費は最低限度の生活維持を目的とする給付であり、その趣旨から借金返済に充てることは適切とはされていません。状況によっては指導や支給額の調整の対象になる可能性があります。
✔ 親族援助や臨時収入の場合
親族からの援助や臨時収入は、原則として収入認定の対象となります。
そのため、事前に届け出ておくことが必要です。
無申告のまま受け取ると、後に返還を求められる可能性があります。
③ 家計管理の実態
福祉事務所は、生活が最低限度水準を維持できているかどうかも確認します。
ただし、娯楽費や交際費があること自体が直ちに違法となるわけではありません。支出内容が極端である場合や生活維持が困難になっている場合に、助言や指導が行われることがあります。
また、任意整理中に返済を優先しすぎて、
・食費や医療費を削る
・体調を崩す
といった状況になると、本来の制度趣旨に反する状態になりかねません。
生活保護制度は「最低限度の生活を保障する」ことが目的であり、返済のために生活を犠牲にすることは本末転倒です。
生活保護受給中に任意整理を進める場合は、
1.収入や援助は必ず届け出る(生活保護法61条)
2.返済原資を明確にする
3.家計簿や通帳を整理し、説明できる状態にしておく
この3点が重要です。
情報を隠したり、後からまとめて報告したりすると、信頼関係に影響する可能性があります。透明性を保ちながら進めることが、受給継続と生活安定の両立につながります。
手続き中に避けるべき行動|受給に悪影響を与え得る注意点
任意整理を進める間は、生活保護受給中という前提を踏まえ、普段以上に慎重な行動が求められます。何気ない対応が誤解を招き、指導や支給額の調整(減額等)の対象となる可能性もあるため、報告・相談・透明性を基本に進めましょう。
① 収入・援助の未申告や過少申告
任意整理では、専門家(弁護士・司法書士)に正確な収支状況を伝えることが不可欠です。同時に、生活保護受給中は収入や資産、生活状況の変化を届け出る義務(生活保護法61条の趣旨)があります。
・親族援助や臨時収入を専門家には伝えたが福祉事務所へ未申告
・逆に、福祉事務所には申告したが専門家へ未共有
といった情報の不一致は、返還を求められるリスクや、返済計画の破綻につながり得ます。情報の一貫性を保ちましょう。
② 手続き中の新規借入れ
任意整理の交渉中に新たな借入れを行うと、既存債権者から不誠実と受け取られる可能性があり、和解条件に影響することがあります。また、生活保護制度上も借入れの状況は確認対象になり得ます。違法業者(いわゆる闇金)からの借入れはトラブルを深刻化させるため、絶対に避けましょう。困窮時はまずケースワーカーや専門家に相談してください。
③ 財産の隠匿や不自然な名義変更
財産を親族名義へ移す、口座を隠すなどの行為は、生活保護制度上の問題となるだけでなく、手続き全体の信用を損ねます。悪質な場合は詐欺罪等が問題となる可能性もあります。財産・口座の状況は正直に開示しましょう。
④ ケースワーカーとの連絡回避・調査拒否
訪問や面談、資料提出の要請に応じないことは、疑念を招きやすく、支給の見直しにつながることがあります。任意整理中は状況が変わりやすいため、早めの共有と誠実な対応が受給継続の近道です。
⑤ 専門家の助言を無視した独断行動
債権者へ勝手に連絡する、合意条件を自己判断で変更する等は、和解の破綻や訴訟リスクを高めます。疑問点は必ず専門家へ確認してから動きましょう。
原則は「報告・相談・透明性」です。一人で抱え込まず、支援者と連携して進めることが最も安全です。
自治体や法テラスの無料法律相談|効果的な活用法
生活保護受給中でも、自治体や法テラスの相談制度を活用できます。費用面の不安を抑えつつ、専門的な助言を受けられます。
自治体の無料法律相談
市区町村や社会福祉協議会で、弁護士・司法書士が30分程度の相談を行うことが一般的です(予約制が多い)。
持参資料:借入先一覧、返済状況が分かる書類、生活保護受給証明書、通帳の写し等。
短時間で有益な助言を得るため、質問をメモして優先順位を付けておきましょう。
法テラス(民事法律扶助)
経済的に困窮している方を対象に、相談料や依頼費用の立替等を行う制度です(資力要件等の審査あり)。
生活保護受給者は立替の対象となることが多く、償還(返済)の取扱いは個別判断です(必ず免除されるわけではありません)。
相談時は受給証明書や家計資料を持参すると具体的な助言につながります。
活用のコツ
・まず自治体相談で全体像を把握
・次に法テラスで具体的手続きへ
・相談内容はケースワーカーにも共有
※無料相談は「助言の場」であり、その場で解決が完了するわけではありません。複数意見が出た場合は、自分の生活実態に最も合う選択を軸に判断しましょう。
生活保護受給中でも債務整理の申立て自体は可能です。ただし、
・収入・援助の適切な申告
・返済原資の明確化
・専門家と福祉事務所との連携
が前提となります。
自己破産の場合、免責許可決定が確定すれば支払義務は原則免除され、取り立ては法的に止まります。任意整理や個人再生も、要件を満たせば利用可能です。いずれも「逃げ」ではなく、法律が用意した再出発の制度です。
不安があるときこそ、早めに専門家への相談をおすすめします。
まとめ
生活保護受給中であっても任意整理などの債務整理を検討すること自体は可能です。ただし、通常の場合と異なり、いくつか重要な注意点があります。特に押さえておきたいのは、生活保護費は最低限度の日常生活を維持するための給付であり、原則として借金返済の原資にはできないという点です。そのため、返済を前提とする任意整理は、安定した別の収入や将来的な就労見込みがなければ現実的でないケースもあります。
そこで重要になるのが、早めの専門家への相談です。弁護士や司法書士に相談すれば、任意整理・自己破産・個人再生のうち、どの手続きが状況に合っているのかを具体的に判断してもらえます。また、費用面が不安な方でも、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる可能性があります。生活保護受給者は資力要件を満たすことが多く、弁護士費用の立替や償還猶予の対象となる場合があります。借金問題は一人で抱え込まず、公的制度を活用しながら、無理のない解決方法を探すことが大切です。
くすの木総合法務事務所は、借金問題の専門家として電話やメールでのご相談を無料で受付しています。まずはお気軽にご相談ください。











