Last Updated on 2026年4月21日 by 監修者:司法書士 藤田太
「複数のカード会社や消費者金融から借りているけど、まとめて整理できるのか」と不安に感じていませんか。
任意整理は、借入先ごとに交渉を行う手続きのため、複数社からの借入がある場合でも対応が可能です。むしろ、利息のカットや返済負担の軽減といった効果を得やすく、状況に応じて整理する対象を選べる点も特徴です。ただし、すべての借入が同じ条件で整理できるとは限らず、金融機関ごとの対応方針によって結果が異なる場合もあります。
この記事では、複数社からの借入を任意整理できるのか、その仕組みや注意点、弁護士・司法書士に相談するメリットについて解説します。状況に合った最適な解決方法を見つけていきましょう。
任意整理で複数社の借金を解決する仕組み
複数社から借入があり、毎月の返済管理や終わりの見えない不安に苦しんでいませんか。「一部の借金だけ整理できるの?」「費用が心配…」と悩む方は少なくありません。実は、任意整理なら複数社からの借入がある場合でも、整理する業者を自由に選んで柔軟に手続きを進められます。
ここでは、複数社の任意整理に関する仕組みや費用の目安、失敗しないための基準を分かりやすく解説します。リスクを正しく理解し、専門家への相談を通じて借金問題の確実な解決を目指しましょう。
一部の借入だけを整理対象に選ぶことは可能
結論として、複数ある借入のうち、特定の債権者のみを選んで任意整理を行うことは可能です。任意整理は裁判所を通さず、各債権者と個別に返済条件(将来利息のカットや分割返済など)を交渉する手続きであるためです。
【他の債務整理との違い】
| 手続き | 対象業者の選択 | 裁判所の利用 |
| 任意整理 | 選択可能 | 不要 |
| 個人再生 | 原則すべての債務が対象 | 必要 |
| 自己破産 | 原則すべての債務が対象 | 必要 |
【活用できる具体例】
・住宅ローンを除外して自宅を維持する
・保証人付きの借入を除外して迷惑をかけない
・自動車ローンを残して生活に必要な車を維持する
【注意点(重要)】
・一部のみ整理する場合、他の債権者との公平性に配慮が必要な場合がある
・整理対象から外した借入は、従来どおり返済を継続する必要がある
・クレジットカードは、対象外でも利用停止や更新不可となる可能性がある
・債権者の方針によっては、交渉に応じないケースもある
依頼後すぐに督促が止まる「受任通知」の仕組み
弁護士や司法書士に依頼すると、早ければ即日〜数日で業者からの督促が止まります。これは、専門家が債権者に送付する「受任通知」によるものです。
貸金業法第21条により、貸金業者は受任通知を受け取った後、正当な理由なく債務者本人へ直接取り立てを行うことが禁止されています。そのため、通知到達後は電話や郵便による督促が原則として停止します。
なお、「即日で必ず停止する」とは限らず、実際に督促が止まるタイミングは、各業者に受任通知が到達した時点となります。
督促が停止するまでの一般的な流れは以下の通りです。
1.相談・依頼:専門家と面談し、委任契約を締結
2.通知の送付:専門家が各債権者へ受任通知を発送(即日〜数日程度)
3.督促の停止:業者が通知を受領後、直接の督促が停止
毎日鳴り続けていた電話や通知が止まることで、精神的な負担が大きく軽減されるケースが多いです。
返済管理を一本化して精神的負担を軽減する
複数社への返済も、任意整理を行うことで返済条件を整理し、管理の負担を大きく軽減できます。特に、多くの法律事務所では、和解後の返済をサポートする「送金代行サービス」を提供しており、実質的に窓口を一本化することが可能です。
ただし、送金代行サービスの有無や利用条件は事務所ごとに異なり、必ず利用できるとは限りません。
完済までの一般的な流れは、以下の通りです。
1.毎月の入金:月に1回、指定日までに返済総額を事務所の口座へまとめて入金
2.代行送金:事務所が和解内容に基づき、各債権者へ返済金を振り分けて送金
3.完済まで継続:入金管理を一元化することで、返済漏れを防ぎながら計画的に返済
返済日や振込先がバラバラになる複雑さから解放され、精神的な負担を軽減しながら生活再建に集中できる点が大きなメリットです。
任意整理はどこまで対象にするべき?金融機関の選び方と費用相場
任意整理は対象とする金融機関を自由に選べるため、今後の生活や信用情報への影響を踏まえた判断が重要になります。
また、依頼にかかる費用についても、事務所ごとに違いがあり、相場を知らないまま進めると思わぬ負担になるケースもあります。
ここでは、任意整理の対象にする金融機関の選び方のポイントと、弁護士・司法書士に依頼した場合の費用相場の目安をご紹介します。
金利だけで判断しない|交渉難易度を踏まえた整理対象の選び方
任意整理の対象を選ぶ際、金利の高さだけで優先順位を決めるのは適切とはいえません。なぜなら、債権者ごとに交渉方針が異なり、将来利息のカットや分割回数について柔軟に応じる業者もあれば、条件面で厳しい対応を取る業者もあるためです。
そのため、スムーズに任意整理を進めるには、金利だけでなく「交渉の通りやすさ(交渉難易度)」も踏まえて整理対象を検討することが重要です。
整理対象を見極める際の主なチェックポイントは以下の通りです。
・将来利息のカットや分割払いの条件について、柔軟な対応が期待できるか
・取引期間が短く(一般的に1年未満など)、和解条件が厳しくなりやすい状況か
・督促や法的手続き(訴訟・支払督促など)への移行が比較的早い傾向があるか
・過去の交渉実績から、和解条件に一定の傾向が見られる債権者か
任意整理は、すべての債務を一律に対象とする必要はなく、債権者ごとに個別に対応を検討できる手続きです。実務経験のある弁護士や司法書士の助言をもとに、生活への影響や返済計画を踏まえた最適な組み合わせを判断することが重要です。
ローンや保証人付き借入を除外する際の注意点
車のローンや保証人が付いている借入は、任意整理の対象から外すかどうかを慎重に判断する必要があります。これらを対象に含めた場合、ローン契約に基づき車両の引き揚げ(所有権留保がある場合)や、保証人に対する一括請求が行われる可能性があるためです。
そのため、生活への影響を考慮し、あえて対象から外すケースも多く見られます。ただし、任意整理を行う以上、一部の債権者のみを対象とした場合でも、信用情報への影響を完全に避けることはできません。
特定の借入を除外した場合の主な注意点は以下の通りです。
・整理対象外のクレジットカードでも、途上与信(定期的な審査)により利用停止や限度額の引き下げが行われる可能性がある
・信用情報機関に事故情報が登録され、一般的に完済後から約5年間は新規借入やローン審査に影響が出る
・同一グループ会社や同一保証会社を利用している場合、信用リスクの判断により、整理対象外の契約にも影響が及ぶ可能性がある(例:利用制限・契約見直し等)
また、預金口座と借入先が同一金融機関である場合、預金と借入金が相殺される可能性がある点にも注意が必要です。
どの借入を対象に含めるか・除外するかは、生活維持や資産への影響を踏まえた判断が重要です。迷った場合は、早い段階で弁護士や司法書士に相談し、個別の状況に応じた最適な対応を検討することをおすすめします。
1社から複数社まで|社数に応じた任意整理の費用目安
任意整理の費用は、一般的に「債権者1社あたり〇万円」といった形で設定されるケースが多く、依頼する社数に応じて総額が変動します。
借入先が複数ある場合の費用目安は以下の通りです。
| 依頼社数 | 着手金の目安 | 解決報酬金の目安 | 事務手数料・その他 |
| 1社 | 2万円〜5万円 | 約2万円 | 3千円〜5千円程度 |
| 2社 | 4万円〜10万円 | 約4万円 | 3千円〜5千円程度 |
| 4社以上 | 8万円〜20万円以上 | 約8万円〜 | 3千円〜5千円程度 |
※上記はあくまで一般的な相場であり、事務所や案件内容によって異なります。
また、任意整理では以下のような費用が別途発生する場合があります。
・減額報酬:交渉により減額できた金額の一定割合(例:10%前後)
・過払い金報酬:過払い金が発生した場合の成功報酬(回収額の20%前後など)
依頼社数が多い場合には、1社あたりの費用が割安になる「ボリュームディスカウント」を設けている事務所もあります。
さらに、多くの事務所では分割払いや後払いに対応しているため、初期費用の負担を抑えて手続きを開始することも可能です。ただし、支払い条件や総額は事務所ごとに異なるため、契約前に必ず見積もりを確認することが重要です。
複数社の任意整理で後悔しないために|リスク管理と注意点
複数の借入を抱えている場合、任意整理は有効な解決手段の一つですが、進め方を誤ると思わぬリスクが生じることもあります。たとえば、対象とする債権者の選び方や返済計画の立て方によっては、生活への影響が大きくなったり、想定外のトラブルにつながるケースも少なくありません。
任意整理は債権者ごとに個別に対応できる柔軟な手続きである一方、その分、適切な判断が重要になります。
ここでは、複数社の任意整理を進めるうえで押さえておきたいリスク管理のポイントや、事前に知っておくべき注意点について解説します。
銀行とカード会社の系列関係と社内情報の影響
銀行のカードローンを任意整理する際は、保証会社や同一グループ企業への影響に注意が必要です。銀行のカードローンは、多くの場合、カード会社や消費者金融が保証会社として関与しており、審査や債権管理に影響を及ぼしています。
また、信用情報機関に登録された事故情報が一定期間経過後に削除された場合でも、各金融機関が独自に保有する取引履歴(いわゆる「社内情報」)は残ることがあり、同一グループ内での審査に影響する可能性があります。ただし、その保存期間や運用は各社ごとに異なり、一律に「残り続ける」とは限りません。
代表的な銀行と主な保証会社の例は以下の通りです。
| 銀行名 | 主な保証会社 |
| 三菱UFJ銀行 | アコム |
| 三井住友銀行 | SMBCコンシューマーファイナンス(プロミス) |
| みずほ銀行 | オリエントコーポレーション(オリコ) |
銀行のカードローンを任意整理した場合、保証会社が代位弁済を行うことが一般的であり、その結果、当該保証会社や関連サービスの利用に影響が出る可能性があります。
また、同一グループ内のクレジットカードやローンについても、審査や利用継続に影響が及ぶ場合があります。
さらに、銀行口座と借入が同一金融機関にある場合、預金と借入金が相殺される可能性があるほか、一定期間口座の利用制限がかかるケースもあるため注意が必要です。給与振込口座として利用している場合は、事前に別の銀行口座へ変更しておくと安心です。
和解に応じないケースへの対策と交渉の現実
「専門家に依頼すれば必ず分割払いで和解できる」というわけではありません。債権者は任意整理に応じる法的義務がないため、取引期間が極端に短い場合や、長期間の滞納がある場合などには、和解条件が厳しくなったり、交渉自体に応じないケースもあります。その結果、支払督促や訴訟などの法的手続きに移行する可能性も否定できません。
こうした状況に備えるための実務上のポイントは以下の通りです。
・依頼前の対応:無理のない範囲で返済を継続している場合は、支払意思の評価につながることがあります(ただし、生活に支障が出る無理な返済は避けるべきです)
・支払い能力の客観的説明:収支状況(家計表など)を整理し、現実的な分割返済計画を提示することで、交渉の土台を整える
・早期の相談:滞納が長期化する前に専門家へ相談することで、選択肢(任意整理以外の手続きも含む)を広げることができる
・手続きの選択肢の検討:任意整理での解決が難しい場合は、個人再生や自己破産など他の法的手続きも視野に入れる
任意整理はあくまで「交渉」による解決手段であるため、すべてのケースで同様の結果が得られるわけではありません。現実的な見通しを踏まえたうえで、適切な手続きを選択し、計画的に進めることが重要です。
複数事務所への依頼|費用と管理面のデメリット
複数社からの借入がある場合、異なる法律事務所へ分散して依頼することは、慎重に検討しましょう。事務所ごとに着手金や報酬金が発生するため、結果として費用負担が大きくなる可能性があるからです。また、和解成立や返済開始のタイミングが事務所ごとに異なることで、返済管理が複雑になる点にも注意が必要です。
さらに、各事務所が個別に交渉を進めるため、全体の返済バランス(毎月の総支払額など)が最適化されにくいという側面もあります。
依頼前に複数の事務所へ相談し、いわゆるセカンドオピニオンを得ること自体は有効です。ただし、最終的に委任契約を結ぶ際は、原則として一つの事務所にまとめることで、窓口が一本化され、返済計画や交渉方針を一元的に管理しやすくなります。
なお、債務の内容や金額によっては(例:一部が司法書士の取扱範囲を超える場合など)、やむを得ず複数の専門家に依頼するケースもあります。その場合でも、全体の返済計画に齟齬が生じないよう、事前に十分な調整を行うことが重要です。
任意整理をスムーズに進めるために|事務所選びと相談の流れ
任意整理を早く、そして確実に進めるためには、依頼する事務所選びと初回相談の進め方が重要です。どの専門家に依頼するかによって、交渉の進みやすさや返済条件、さらには手続き全体のスピードにも差が出ることがあります。
一方で、「何を基準に事務所を選べばいいのか」「相談時に何を伝えるべきか」が分からず、不安を感じる方も少なくありません。
ここでは、任意整理をスムーズに進めるための事務所選びのポイントと、相談から依頼までの具体的な流れについて解説します。
140万円の制限と弁護士・司法書士の違い
任意整理を依頼できる専門家は、主に弁護士と認定司法書士です。どちらに依頼するかは、債務の内容や金額によって判断する必要があります。
特に重要なのが、認定司法書士には「1社あたりの債務額が140万円以下の案件に限り、代理人として交渉できる」という制限がある点です。この「140万円」は、元金だけでなく利息や遅延損害金を含めた金額で判断されます。
両者の主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 弁護士 | 認定司法書士 |
| 対応可能な借入額 | 制限なし | 1社あたり140万円以下(※) |
| 代理権の範囲 | 制限なし | 簡裁代理権の範囲内 |
| 費用の傾向 | 比較的高い傾向 | 比較的抑えられる傾向 |
※140万円を超える場合、司法書士は書類作成支援は可能ですが、代理人として交渉することはできません。
そのため、1社あたりの債務額が140万円以下で費用を抑えたい場合は司法書士、140万円を超える債務が含まれる場合や、より幅広い対応を求める場合は弁護士を選ぶのが一般的です。
なお、判断基準は借入の「総額」ではなく、あくまで「1社ごとの債務額」である点に注意が必要です。
「初期費用0円」の仕組みと積立金制度|辞任リスクへの注意点
「初期費用0円」という広告を見かけることがありますが、これは完全に無料という意味ではありません。多くの場合、債権者への返済が一時的に停止している期間を利用し、専門家への費用を分割で支払う「積立(分割払い)制度」を指します。
この積立金の支払いが滞ると、専門家から委任契約を解除(辞任)される可能性があります。辞任となった場合、新たな対応が取られなくなるため、結果として債権者からの督促や法的手続き(請求・訴訟など)が再開するおそれがあります。
専門家に辞任されてしまうリスクを回避し、安全に手続きを進めるためのポイントは以下の通りです。
・相談段階で、無理のない毎月の支払額を専門家とすり合わせる
・収入と支出の状況を正確に伝え、現実的な資金計画を立てる
・支払いが難しくなりそうな場合は、事前に必ず専門家へ連絡し、対応を相談する
任意整理は、専門家との継続的な信頼関係のもとで進める手続きです。無理のない支払い計画を立てることが、円滑な解決への第一歩となります。
相談から和解成立・返済開始までの流れ
専門家に相談してから、実際に返済を再開するまでの一般的な流れを把握しておきましょう。
1.無料相談・委任契約:借入状況や収支を伝え、解決方針に納得したうえで委任契約を締結
2.受任通知の送付:専門家が債権者へ通知を送り、以後の連絡窓口が専門家へ移行(督促は原則として停止)
3.取引履歴の開示・引き直し計算:債権者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法に基づく再計算を実施
4.費用の支払い・準備期間:専門家費用の分割払い(積立)を行いながら、返済計画を整理
5.和解交渉・合意:将来利息のカットや分割回数などについて、専門家が各債権者と交渉し合意を目指す
6.返済開始:和解内容に基づき、合意した条件で返済を再開
※受任通知送付後も、法的に「返済義務そのものがなくなるわけではない」点には注意が必要です。
対応を先延ばしにすると、遅延損害金の増加や法的手続きへ移行してしまうリスクが高まり、解決の選択肢が狭まる可能性があります。少しでも有利に進めるためにも、早い段階で専門家へ相談することが重要です。
まとめ
複数の金融機関から借入、いわゆる多重債務の場合でも、任意整理(債務整理)によって返済負担を軽減できる可能性があります。任意整理は、弁護士や認定司法書士が債権者と交渉し、将来利息のカットや分割払いの見直しを行う手続きで、裁判所を通さずに進められる点が特徴です。複数社からの借入がある場合でも、すべてを対象にする必要はなく、生活への影響を考慮しながら整理する借入先を選ぶことができます。
また、手続きを依頼すると、専門家が受任通知を送付することで、債権者からの直接の督促は原則として停止されます。これにより、精神的な負担を軽減しながら、落ち着いて今後の返済計画を立てることが可能になります。
弁護士と司法書士のどちらに依頼するかは、借入額や対応範囲によって異なります。特に司法書士には、1社あたり140万円を超える案件について代理交渉ができないという制限があるため、借入状況に応じた選択が重要です。
現在、すでに複数社の借入がある場合は、放置すると遅延損害金の増加や法的手続きに発展するリスクを否定できません。
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